104.日本おとぎ噺 「年神さま」
昔々、ある山里の小さな村に、年の瀬を迎える老夫婦が住んでおりました。子どももおらず、二人はつましい暮らしを送っていましたが、正月の支度をする米も餅もありません。夫婦は「せめて神棚だけはきれいに」と、囲炉裏端で古い神棚を丁寧に拭き清めました。そこへ、不思議なことに、背中に大きな俵を担いだ白髪の老人が... 続きをみる
語り継ぐこころ/日本おとぎ噺・江戸小咄・古典落語・笑いの匠たち
日本おとぎ噺・江戸小咄、古典落語・笑いの匠たちのダイジェスト版と挿絵です。たまに、私の与太話が入ります。 文も挿絵もChatGPTが作っています。 よかったら ★nice! をポチット押してね。
昔々、ある山里の小さな村に、年の瀬を迎える老夫婦が住んでおりました。子どももおらず、二人はつましい暮らしを送っていましたが、正月の支度をする米も餅もありません。夫婦は「せめて神棚だけはきれいに」と、囲炉裏端で古い神棚を丁寧に拭き清めました。そこへ、不思議なことに、背中に大きな俵を担いだ白髪の老人が... 続きをみる
朝、嘉十は用事をすませるため、山あいの道を一人で出かけた。空は高く晴れ、風はやわらかく、野や畑は静かに光っていた。嘉十は見なれた里の景色をあとにし、のんびりと山のほうへ歩いていく。 やがて嘉十は、草の青々と広がる気持ちのよい野原へ出た。あたりには木立がまばらに立ち、風が吹くたび草の波がゆれる。嘉十... 続きをみる
ある日、長屋の与太郎がご隠居のところへ駆け込んできた。 「隣の爺さんが、毎晩“十字を切ってる”んですよ。こえぇったらありゃしねぇ」 驚くご隠居、「十字だと? 江戸の町で、異人かなんかか?」と眉をひそめる。 与太郎いわく、その爺さん、夜な夜な手を合わせては胸の前で十文字を描き... 続きをみる
近ごろ、運転手が足りないという理由で、町のバス路線が廃止になった。病院や買い物へ行く年寄りには大問題だが、会社も運転する人がいなければ、バスを走らせようがない。人は余っているように見えても、必要な仕事には集まらない。世の中とは、なかなかうまく配車されないものである。 ところが、この先は自動運転が普... 続きをみる
昔、ある村に病気やけがをよく治す薬師さまがいました。薬師さまは薬草を煎じ、村人たちを分け隔てなく助けてくれました。ある日、薬師さまは寺の境内で子どもたちが遊ぶ声を聞き、やさしい笑みを浮かべます。しかし、薬草を取りに山へ出かける途中、急な雨に見舞われ、体調を崩してしまいます。 薬師さまの体調は次第に... 続きをみる
三兄弟と北守将軍ソンバーユーは、黒い粉の出どころを求めて北方へ向かった。山奥の水源では、崩れた岩山から黒い土が流れ出し、川や草地を汚していた。リンパーは人の病、リンプーは軍馬の不調、リンポーは草木の衰えが、すべて同じ原因から起きたと突き止めた。 将軍と兵士たちは岩や土砂を取り除き、三兄弟は水を清め... 続きをみる
ある日のこと、江戸の町に住む商人・吉兵衛(きちべえ)が、買い物に出かけている最中、井戸の前を通りかかります。吉兵衛は、この井戸がある場所に住んでいる老婆が、井戸の水を使っている最中に、茶碗を落としてしまうという噂を耳にしたことがありました。どうやら、その茶碗がどうしても戻らないと困っているようです... 続きをみる
今日、ジムで顔なじみの大学三年生に会った。聞けば、もう就職活動の真っ最中で、説明会や面接のため東京へも何度か出かけたという。まだ三年生なのに、ずいぶん早くから動くものだと思った。企業研究、エントリーシート、面接対策。私の学生時代とは、就職までの道のりそのものが違うようだ。 私のころは、大学四年の十... 続きをみる
むかし、山あいの小さな村に、力持ちで働き者の若者・たろ丸がいました。たろ丸は村人たちを手助けし、困っている者があれば山を越え川を渡り、何でも引き受けました。ある日、村を流れる川が急に氾濫しそうになり、たろ丸は一人で堤を守り、村を水害から救いました。その働きぶりに、村人たちはますます感謝しました。 ... 続きをみる
リンポーは、軍馬が食べた草と北方から運ばれた土を竹籠に集め、色や匂い、根の傷み方を丁寧に調べた。草の葉には黒い粉が付き、根の周囲の土は固く乾いていた。リンポーは、北の土地で草木を弱らせる異変が起きていると考えた。 リンポーが草の根を水で洗うと、細い根の一部が黒く変色していた。さらに土を器へ入れて水... 続きをみる
両国の角力場。春の大一番を控え、江戸っ子たちの胸も高鳴る。見物席は朝から満席、長屋の与太郎もご隠居に誘われ、尻をはたいてやって来た。弁当片手に、「どうせ土俵際のどっこい勝ちよ」と、さっそく通人ぶる。 土俵入りが始まり、大男たちがずらりと並ぶ。与太郎はひときわ小柄な若い力士に目を止め、「あっしはあの... 続きをみる
終戦記念日が過ぎると、今年も空襲、原爆、疎開、戦死者など、日本人が受けた戦争の被害が新聞やテレビで大きく取り上げられた。もちろん忘れてはいけない。しかし見ているうちに私は、「では日本が相手国の人々に与えた被害は、どのくらい語られているのだろう」と思った。戦争には、被害を受けた側だけでなく、相手に被... 続きをみる
昔、山里に一匹のキツネが住んでいました。人をだますのが得意でしたが、ある日、村の若い百姓に見破られ、すっかり恥をかきます。「次はもっと大きな手で驚かせてやる」とキツネは心に決め、毎日空を見上げて考え込みました。ある時、空を飛ぶ大鷲を見て、「これだ!」とひらめきます。 キツネは山の奥で、古い神木の下... 続きをみる
リンプーは、将軍ソンバーユーが乗って帰った軍馬を診察した。馬は息が荒く、足元もふらついていたが、傷や骨には大きな異常がない。リンプーは耳を澄ませて呼吸を聞き、口の中や蹄、鞍の下まで丁寧に調べた。将軍と馬が同じころから弱っていることに、不思議なつながりを感じた。 リンプーは、馬の飼葉と水を調べるよう... 続きをみる
江戸のある大店。主人は厳格で真面目な人物。番頭の清兵衛は堅物で通っており、金勘定も仕入れもきっちりこなし、店の者からも一目置かれていた。ある日、店ではお得意先の接待が重なり、奉公人たちは大わらわ。だが、そんな最中、清兵衛がこっそりと外出してしまう。これを見咎めた手代たちは不審に思い、こっそり後をつ... 続きをみる
最近、米の値段が少し下がってきた。買う側としてはありがたい。「やっと米も落ち着いてきたか」と喜びたいところだが、農家のことを考えると単純には喜べない。肥料も燃料も農機具も高い。米だけ安くなって、本当に農業は続けられるのだろうか。どうも米の政策そのものに、どこか無理があるような気がしてきた。 聞けば... 続きをみる
むかし、雪深い山あいの村に、美しい娘と母が住んでいました。冬のある日、母が病に伏せ、薬草を取りに娘が山へ向かいます。山道は吹雪に覆われ、木々も真白。娘は必死に雪を踏みしめ進みますが、その背後から灰色のオオカミが静かに姿を現しました。 娘はオオカミに気づかず山奥へ進みます。しばらくして振り返ると、距... 続きをみる
北の戦から帰還した将軍ソンバーユーは、宮殿へ入るなり激しい熱と胸の苦しみを訴え、寝台に横たわった。王は三人兄弟を呼び寄せ、まず人を診る長兄リンパーに診察を命じた。リンパーは静かに将軍のそばへ座り、顔色と呼吸を確かめた。 リンパーは将軍の脈を丁寧に取り、目や舌の色、傷の有無を調べた。しかし、高熱のわ... 続きをみる
夕暮れ時、長屋に豆腐屋の声が響く。「とうふ〜、とうふ〜」と、のんびりした売り声に、子どもらが顔をのぞかせ、大人たちは鍋を手に立ち上がる。豆腐屋の与太郎は、顔はぼんやり、声はのんびり。けれど、どこか憎めぬ調子で、町の人気者だった。 ある日、近所の女房衆が噂話。「最近、あの与太郎、豆腐に“... 続きをみる
新聞を見ていたら、高市内閣の世論調査が並んでいた。時事通信は支持49.0%、朝日は53%、毎日は41%、ANNは49.2%。同じ日本国民に聞いているはずなのに、数字はずいぶん違う。私は表を眺めながら、「これは世論を調べた数字なのか、それとも数字のほうが世論を迷わせているのか」と首をかしげた。 調べ... 続きをみる
昔、ある村のお寺に立派な本尊さまが安置され、人々は日々手を合わせていました。ところが、近くを旅していた悪だくみ好きの男が、「これを盗めば一儲けできる」と企みます。夜更け、人目を忍んで寺へ忍び込み、本尊を抱えて逃げ出しました。 男は盗んだ本尊を売りさばこうとしますが、思うように買い手が見つかりません... 続きをみる
北の国境を守る大将軍ソンバーユーは、長い遠征を終え、大勢の兵を率いてラユーの都へ帰ってきた。城門には旗が並び、人々は道の両側に集まって英雄の帰還を喜んだ。しかし将軍は馬上で背を丸め、顔色も青く、疲れ切った様子だった。 宮殿へ戻ったソンバーユーは、王や家臣に遠征の成功を報告した。ところが席を立とうと... 続きをみる
40.柳家金語楼(やなぎや きんごろう ) 生年月日明治34年(1301年) 2月28日 没年月日昭和47年(1972年) 10月22日 享年:71歳 柳家金語楼(やなぎや きんごろう )本名山下 敬太郎(やました けいたろう)は、東京で生まれた落語家・喜劇俳優です。6歳で初舞台を踏み、三遊亭金登... 続きをみる
北方領土のニュースを見ると、私はいつも鈴木Mさん を思い出す。長年ロシアとの対話を訴え、モスクワへも足を運ぶ。その熱心さだけなら大したものだと思う。しかし相手はプーチンさんである。こちらが親しく話せば、その分だけ領土問題が前へ進むのかと思えば、北方四島はいっこうに動かない。私は地図を見ながら、「話... 続きをみる
昔、ある山あいの村に「おりゅう」という美しい娘がいました。働き者で心優しく、村の誰からも好かれていました。おりゅうには恋仲の若者・茂吉(もきち)がいましたが、村を離れて稼ぎに出ることになります。ふたりは「必ず戻る」と約束し、別れを惜しみつつも見送りました。 数年が過ぎ、茂吉はようやく村へ戻ることが... 続きをみる
ラユーの都には、評判の高い三人兄弟の医者がいた。長兄リンパーは人間の病を診る医者、次兄リンプーは馬や獣を治す医者、末弟リンポーは草木や穀物をよみがえらせる医者である。人も獣も作物も、この兄弟の名を知り、都の人々はその不思議な腕前を頼みにして暮らしていた。 長兄リンパーのもとには、熱を出した者やけが... 続きをみる
とある江戸の貧乏長屋に住む乱暴者の通称「らくだ」が、ついに酒の呑みすぎでくたばった。らくだは嫌われ者だったが、その死に顔はなぜか穏やか。そこへ現れたのが、らくだの兄貴分を名乗る札付きのごろつき「兄貴分」。香典や葬式の段取りをつけようにも、近所の者たちは誰も関わりたがらず、長屋は静まり返る。 兄貴分... 続きをみる
久しぶりに草刈りをした。今年の夏はあれほど暑かったのに、不思議なことに雑草の伸びがいつもより遅い。例年なら「またこんなに伸びたか」とため息をつくところだが、今年は駐車場を眺めても、それほど気にならない。「今度の休みに刈ればいいか」と、私は草刈りを先送りした。 ところが休みの日になって見てみると、草... 続きをみる
昔、ある山奥の古びたお堂に、一人の琵琶法師(びわほうし)がやってきました。法師は旅の途中であり、日が暮れる前に雨宿りができる場所を探していたのです。そのお堂は静かで、長らく人が訪れていない様子でしたが、法師はここを今夜の宿と決め、琵琶を抱えて中へ入りました。 夜になると、法師は堂の中央に座り、念仏... 続きをみる
光の人に導かれ、一郎と楢夫は青く静かな湖と美しい野原に立っていた。そこには苦しみも寒さもなく、子どもたちは明るい顔で遊んでいた。一郎は、ようやく弟を救えたと思い、楢夫の手を強く握った。 しかし光の人は、一郎だけは元の世界へ帰らなければならないと告げた。楢夫はこの安らかな国に残るのだという。一郎は弟... 続きをみる
ある日、長屋の与太郎が道端で見つけたのは、立派な煙管(きせる)。彫金細工の施された銀の羅宇に、鼈甲の吸い口。どう見ても上物で、「こいつぁ大名の落とし物かねぇ」と、にんまり笑う。帰るなりご隠居に見せびらかすが、「与太、おめぇが持ってたら泥棒に見えちまうよ」とあきれ顔。 さっそく町の銭湯へ持ち込み、「... 続きをみる
先日、街を歩いておりますと、耳には大きなイヤリング、首にはきらきら光る飾り、腕には立派な腕輪という方を見かけました。皆さん思い思いに着飾っておられるのでしょうが、私はふと考えたのでございます。「人は何のために、こんなに飾りを付けるのだろう」と。若い頃からどうも私は、その手のものに縁がございません。... 続きをみる
むかしむかし、ある田舎の寺に、欲張りで怠け者の和尚が住んでいた。朝から晩まで「楽して儲けたい」とぼやきながら、ろくにお経も読まず、居眠りしてばかり。ある日、庫裏(くり)の隅でうとうとしていると、ふいに天井裏から「チュウ、チュウ」とねずみの声がした。和尚は「うるさいのう、ねずみめ」と文句を言うが、ね... 続きをみる
一郎が楢夫を懸命にかばうと、どこからか「にょらいじゅりゃうぼん」という言葉が、風のように心へ届いた。一郎がその言葉を唱えると、鞭の音も泣き声も止まり、辺りは静まり返った。暗い野原の向こうには、黄金色の光が広がり始めた。 光の中から、立派な大きな人がまっすぐ歩いてきた。その人は裸足で、足は貝殻のよう... 続きをみる
江戸は下町の片隅に、道楽者の八五郎が営む骨董屋があった。ところがこの八五郎、商売っ気はゼロ、品物の価値もろくにわからず、もっぱら好きな酒と与太話が日課。店先にはガラクタばかりが並び、見るからに冴えない風情。そんな八五郎を案じたご隠居が、たまには真面目に店を整理してみろと助言する。 しぶしぶ倉を片づ... 続きをみる
今、宮沢賢治、太宰治、そしてこれから芥川龍之介を読もうとしている。三人とも同じ日本の作家なのに、人生への向き合い方がずいぶん違って見える。宮沢賢治を読んでいると、「今が苦しいなら、少しでも良い方へ変えてみよう」と、外へ向かって歩き出す力を感じる。 宮沢賢治の登場人物たちは、貧しさや厳しい自然の中に... 続きをみる
昔、海辺の村に「蛸八(たこはち)」という、貧しいが正直者の漁師が住んでおった。毎日小舟で沖へ出ては、たこ壺で蛸(たこ)を捕って暮らしていたが、大漁の日はめったにない。それでも蛸八は愚痴ひとつ言わず、村人にも親切に接しておった。 ある日、蛸八が漁をしていると、不思議な金色の光を放つ大きな蛸がたこ壺に... 続きをみる
吹雪の中で意識を失った一郎は、気がつくと、雪山とは違う静かな場所に立っていた。赤みを帯びた空の下には枯れ草と細い道が続き、遠くには淡い光が揺れている。一郎は楢夫を捜しながら、ゆっくりと道を進んだ。 道の先には、静かに歩く人々の姿があった。一郎が周囲を見渡すと、その中に楢夫を見つける。兄弟は互いの姿... 続きをみる
ある夏の午後、雷鳴がとどろき始め、町中がざわめいた。 長屋の連中は「こりゃひと雨くるぞ」と洗濯物を取り込んだり、戸を閉めたりと大騒ぎ。そんな中、与太郎が大声で叫んだ。 「こいつは危ねぇ! 尻を隠せ! 雷さまに尻を取られちまうぞ!」 与太郎の言葉に、子どもたちは一斉に尻を押さえて逃げまどい、大人たち... 続きをみる
最近、化粧について少し思うことがある。若い人の顔を見ていると、まつ毛をくっきり描く人と、ぼやっと自然に描く人がいる。昔はそんな違いなど気にも留めなかったが、年を取ると、まつ毛一本にもその人の考え方が出るように見えてくる。顔というものは、案外、正直な看板である。 くっきり描いたまつ毛は、最初のうちは... 続きをみる
ある山里の古寺に、優しい和尚が一人で住んでいた。寺は古びており、檀家も少なく、貧しい暮らしだったが、和尚は毎朝きちんと読経を欠かさなかった。そんなある日、ふらりと一匹の黒猫が寺に現れた。痩せてはいたが、どこか人懐こい様子。和尚は猫に餌をやり、「よく来たのう、檀家になってくれるのか」と笑って声をかけ... 続きをみる
吹雪はさらに激しくなり、一郎と楢夫は進む方角を見失った。雪は膝まで積もり、冷たい風が容赦なく二人の体を打つ。一郎は弟の手を握り、「もう少しだ」と励ましながら歩き続けた。 やがて楢夫は疲れ果て、「もう歩けない」と雪の上へ座り込んだ。一郎は弟を背負おうとしたが、自分の足にも力が残っていなかった。二人の... 続きをみる
ある夜、町内の隠居の家に若い衆が集まって、昔話を肴に長話。そこへ話題にのぼるのが、誰もが知っている「桃太郎」。ところが隠居、これが気に入らない。「犬がきび団子ひとつで命を賭けるわけがない」と理屈をこね、「鬼退治に行くなら、まずは武士に頼むべきじゃろう」と屁理屈満載。若い衆は「まあまあ、話なんだから... 続きをみる
朝の食事は、いつも私一人です。誰かが用意してくれるわけではないので、自分で準備します。とはいえ、朝から包丁や鍋を出すのは面倒です。ご飯は冷凍を温め、味噌汁はインスタント、そこへ納豆を一つ。これだけでも朝食にはなりますが、少し寂しいので、私は冷蔵庫の中に小さな食堂を作ることにしました。 名づけて「タ... 続きをみる
昔、出羽の国の山奥に、身の丈五丈(ごじょう)もある大男の子どもが生まれた。名を「八郎(はちろう)」という。力持ちで、山を動かし、川をせき止め、百姓の手伝いをすれば田んぼ十枚分も耕せた。だが体が大きすぎるために村人たちと暮らすには不便で、やがて一人山にこもって生きることとなった。 八郎は、もっと自分... 続きをみる
一郎と楢夫は峠を越えようと雪山を進んだが、吹雪は急に激しくなった。風に押し戻され、道も足跡も見えなくなる。二人は互いの手を握り、雪に埋もれそうになりながら歩き続けた。 深い雪に足を取られ、楢夫の歩みは次第に遅くなった。一郎は何度も励ましたが、自分も寒さと疲れで息が苦しくなっていた。衣服や髪には雪が... 続きをみる
ある蒸し暑い夏の日、与太郎が長屋の縁側で昼寝をしていた。空は次第に曇り始め、やがて遠くで雷鳴がとどろき始める。隣の婆さんが慌てて洗濯物を取り込む中、与太郎だけは「屁でもねぇや」と高鼾(たかいびき)。「雷が落ちたらどうするんだい!」と周囲が心配しても、与太郎はまったく動じない。 と、そのとき、天から... 続きをみる
私は昭和二十二年生まれ、いわゆる団塊の世代である。戦争が終わって間もないころで、親たちは食べ物も着る物もない時代を懸命に生きていた。行商のおばさんが来れば、子どもたちは後ろをぞろぞろついて歩き、こぼれた豆や菓子を拾って喜んだ。それでも学校はあり、鉛筆一本を大切にしながら、毎日元気に通うことができた... 続きをみる
昔々、ある村の貧しい百姓が山の奥で薪を刈っていると、小さなお地蔵さまがぽつんと立っていた。ただの石像かと思いきや、その鼻からは絶えず鼻水が垂れている。百姓は「これは珍しいお地蔵さんだ」と笑いながらも、丁寧に拭いてあげた。すると突然、お地蔵さまが目を開け、「ありがとう」とつぶやく。驚いた百姓だったが... 続きをみる
山小屋で目を覚ました一郎は、まだ眠る弟の楢夫を起こした。父は早朝から外で働き、冷えた小屋の火を何度も燃やしてくれていた。兄弟が外へ出ると、青空の下で雪山がまぶしく輝いていた。一郎は、霜焼けで赤くなった楢夫の冷たい手を両手で包み、優しく温めてやった。 朝食の前、山の頂から笛のような風の音が響いた。楢... 続きをみる
37.林家三平(初代) 生年月日大正13年(1924年) 11月30日 没年月日昭和55年(1980年) 9月20日 享年:55歳 初代・林家三平(はやしや さんぺい)は、昭和を代表する爆笑派の落語家であり、寄席やテレビで絶大な人気を誇った名人芸人です。本名は海老名修(えびな おさむ)。父は大正期... 続きをみる
私は車を運転していて、どうにも気になることがあります。やたらと道路の左端をなぞるように走る車です。昔の「キープレフト」の名残かもしれませんが、今は中央車線があります。車線の中央を走れば安全なのに、左からの自転車や飛び出しが心配にならないのだろうかと、つい考えてしまいます。 ある日も前の車がずっと左... 続きをみる
江戸のある町に、気立ての良い娘が嫁いだ。娘の婿(むこ)はまじめな男で、いつも「何事も正しく」と心がけていた。ある日、姑(しゅうとめ)から「みそを買ってきておくれ」と言いつけられ、婿は手に壺(つぼ)を持って出かけていった。ところが、行きがけの橋の上で、ふと不安になる。「みその銘柄(めいがら)や量を聞... 続きをみる
狐にそそのかされたホモイは、仲間たちに威張り散らし、ますます乱暴になった。すると「貝の火」は黒く曇り、ついには中で火花が激しく揺れ始める。父は危険を感じ、狐との付き合いをやめて心を改めるよう、もう一度強く諭した。 それでもホモイは父の忠告を聞かず、狐のもとへ向かった。狐と仲間たちは、宝珠の力を利用... 続きをみる
江戸の町の長屋に住む浪人、清三郎。無職の身だが、妻のしっかり者のお滝が支えて日々を過ごしていた。ところがある晩、清三郎が外で酒を飲んで帰ってくると、酔いどれ口調で「今夜は新しい女と…」と口走る。お滝は青筋立てて怒り心頭。嫉妬深い性格で知られ、「悋気(りんき)のお滝」とあだ名されるほど... 続きをみる
八月十五日になると、私はいつも思う。 この日を「敗戦記念日」と言わず、「終戦記念日」と呼んできたのは、ただ言葉をやわらげたかっただけではあるまい。 負けた悔しさよりも、戦を終えた重さを胸に刻み、「もう二度と同じ道へは戻らぬ」と誓った先人たちの、苦い知恵だったのだと思う。 戦に負けた国は、本来なら力... 続きをみる
昔、ある村の若者が、親に先立たれ一人で暮らしていた。真面目で働き者だったが、家が貧しく、なかなか暮らしは楽にならなかった。そんなある晩、夢の中にひとりの老人が現れ、「お前の苦労を見ておる。この先、あんばら闇に出る馬を捕まえれば、運が開けよう」と告げた。 夢から覚めた若者は、あんばらやみ――それは昼... 続きをみる
美しく輝く「貝の火」の評判は森じゅうに広まり、ついにずる賢い狐の耳にも届いた。狐はホモイの家を訪ね、宝を大げさに褒めたたえ、「あなたほど立派な方にこそふさわしい」と巧みにおだてた。父の戒めを忘れかけていたホモイは、狐の言葉に気をよくし、自分が森で最も偉くなったように感じ始める。 狐はホモイを森へ連... 続きをみる
ある夕暮れ、町の辻にひとりの**座頭(盲目の按摩)**が現れた。杖を頼りに歩む姿に、行き交う町人は振り返る。「またあの座頭かい。声が妙に艶っぽくってな」と、どこか噂めいた口調。座頭は通りかかる人に声をかけ、「ちと揉ませていただけませんか」と頼むが、皆なぜか困ったような笑顔で立ち去っていく。 その晩... 続きをみる
ある寒い冬の日、山寺に住む和尚は、薪も尽き、食べ物も乏しくなっていた。雪に閉ざされ、下界との往来も断たれ、孤独と飢えの中で、ただ仏に祈るしかない。そんな折、不意に、襖のすき間から一匹の白いねずみが現れた。和尚は驚きながらも、その小さな命に心が和らぎ、話しかけるように語りかけた。 その夜、和尚がうと... 続きをみる
ホモイが「貝の火」を家へ持ち帰ると、父母はその美しい宝に驚いた。玉は赤や青、金色の光を放ち、まるで小さな炎が貝の中で燃えているようだった。父は、正しい心を失えば光も失われると教え、大切に扱うよう諭した。 貝の火の評判は、たちまち森中へ広がった。狐や鹿、小鳥たちが次々とホモイの家を訪れ、珍しい宝を一... 続きをみる
江戸の魚屋・勝五郎は腕はよいが、大酒飲みで朝寝坊。商いを怠けては女房を困らせていた。ある未明、女房に起こされ、しぶしぶ芝浜へ仕入れに向かう。ところが魚河岸にはまだ人影がなく、浜辺を歩いていると革の財布を拾う。中には大判小判がぎっしり。勝五郎は夢中で家へ駆け戻った。 大金を手にした勝五郎は、「もう働... 続きをみる
むかし、伊豆の上狩野に、広い田畑や山を持つ菊三郎という男がいた。悪人ではなかったが大変な怠け者で、先祖の財産を次々と売り払い、とうとう最後の山まで手放そうとした。山の様子を見に入ると、杉木立の奥に澄んだ沢があり、美しい声で鳴くカジカたちが群れていた。歩き疲れた菊三郎は、大きな岩の上で眠り込んだ。 ... 続きをみる
春の野原で暮らす子兎ホモイは、やさしく素直な心を持つ子でした。ある日、草むらの近くで弱々しい鳴き声を聞き、足を止めます。見ると、小さなひばりの子が困っており、ホモイは放っておけず、そっと近づきました。 ホモイは、こわがるひばりの子を驚かせないよう気をつけながら、やさしく助けました。乱暴なことはせず... 続きをみる
江戸の裏長屋に住む与太郎は、着物の裾を引きずり、歩くたびに泥をはねる粗忽者。ある日、ご隠居が「与太、もう少し尻を端折って、しゃんと歩きな」と注意した。ところが与太郎は首をかしげ、「尻を端折るとは、尻を短くすることですかい」と尋ねる。ご隠居は笑いながら、着物の後ろ裾を帯へ挟む仕草を教えた。 ご隠居は... 続きをみる
平安の昔、都の羅生門に鬼が現れるという噂が広まった。夜な夜な門に近づいた人々が忽然と姿を消すという。人々は恐れ、誰も近づかなくなった。ある日、都一番の弓の名手・渡辺綱(わたなべのつな)が、「このままでは武士の名折れ」と、鬼退治を志願する。 夜、綱は羅生門に潜む。すると突如、空が鳴り、黒雲とともに巨... 続きをみる
数日後の朝、亮二の家の前に、山のような薪が積まれていた。さらに庭には、袋いっぱいの栗まで置かれている。祭りの夜、山男が叫んだ「薪百把と栗八斗を返す」という約束を、本当に果たしたのである。亮二と祖父は、思いがけない贈り物を前に驚いた。 ところが薪と栗は一度だけではなかった。夜になると山から強い風が吹... 続きをみる
江戸は神田の長屋に住む男、与太郎ならぬ「大工の八五郎」は、筋はいいがとにかく粗忽者。ある日、知り合いの旦那から「長屋の雨漏りを見てほしい」と頼まれ、はりきって出かけてゆく。現場に着くと、天井裏の梁(はり)に釘を打ち込むよう頼まれた。八五郎、道具箱を担いで屋根裏にのぼり、早速トントンと音を響かせる。... 続きをみる
むかしむかし、山あいの村に年老いた一人暮らしの老婆がいました。子も孫もなく、糸をつむいでは布を織り、かろうじて暮らしていました。ある雪の夜、老婆が囲炉裏のそばで糸車を回していると、戸を叩く音がしました。開けてみると、小さな痩せた子狸が震えて立っていました。老婆は「かわいそうに」と子狸を抱え、暖めて... 続きをみる
家へ帰った亮二は、祭りの茶屋で団子代を払えず責められていた大男を助け、代わりにお金を置いたことを祖父に話した。さらに男が、薪百把と栗八斗を返すと叫び、山へ逃げていったことも伝えた。 祖父は、困っている人を見過ごさず、自分のお金を差し出した亮二の行いを褒めた。相手が町の人でも山男でも、苦しんでいる者... 続きをみる
長屋の与太郎、近頃ちょいと鼻が高い。というのも、町内で評判の物知り老人・ご隠居のもとに通い詰め、あれこれと豆知識を仕入れては、皆の前で披露しているからで――。 「それはね、昔の中国ではこうだったんだ」などと、それらしく語る与太郎に、子供たちも大人たちも「へぇ~」と感心することしきり。 ある日のこと... 続きをみる
昔ある山里に、好奇心旺盛な若者が住んでいた。彼は人一倍、天狗の話に興味を持ち、「天狗のかくれみのを手に入れたい」と日々山へ足を運んでいた。ある日のこと、山中で木陰に座る一人の天狗を見つけた。天狗は赤ら顔に高い鼻、羽団扇を持ち、傍らに黒く輝く一枚の蓑を置いていた。若者は気配を殺し、天狗が眠りに落ちる... 続きをみる
祭りの会場を歩いていた亮二は、暗い檜の陰にある掛茶屋から大声が聞こえるのに気づいた。人垣の中では、先ほど見世物小屋で出会った大男が、団子二串の代金を払えず、村の若者たちに取り囲まれていた。大男は骨ばった赤い顔に汗を流し、何度も頭を下げていた。 若者が代金を払えと怒鳴ると、大男は激しくどもりながら、... 続きをみる
34.立川志らく(たてかわ しらく) 生年月日昭和38年(1963年) 8月16日 没年月日 ご存命 本日 2026年8月9日現在 :62歳 立川志らくさんは、東京都世田谷区出身の落語家であり、映画評論家や映画監督としても活躍しています。1985年、日本大学芸術学部在学中に七代目立川談志に入門し、... 続きをみる
昔、ある村に「かみそり狐」と呼ばれるずる賢い狐が住んでいた。化けるのが得意で、人間をだましては笑っていた。とくに好物は髪の毛で、町の床屋からこっそり髪を盗んでは山へ逃げ帰るという奇妙な習性があった。人々は恐れてその狐に関わらぬようにしていた。 ある日、若い床屋の新米・市助(いちすけ)が狐に騙されて... 続きをみる
祭りの晩、亮二は胸をはずませながら、村のにぎやかな通りへ出かけた。提灯の明かりがゆれ、太鼓や笛の音が夜気に流れ、屋台には団子や飴、見世物小屋が並んでいる。子どもたちも大人たちも浮き立ち、村じゅうがいつもと違う華やぎに包まれていた。 亮二は人ごみを縫うように進みながら、店先をのぞいて祭りの景色を楽し... 続きをみる
大工の熊五郎、腕は立つが気性が荒く、喧嘩っぱやいことで近所でも知られた存在。ある日、仕事帰りに財布を拾った。中には三両。真っ当に届けようと、名乗り出を待つことにしたが、なかなか現れぬ。やがて、持ち主の左官・八五郎が名乗りを上げた。熊五郎は「拾い主に届け出るとは殊勝な心がけ」と言って財布を返そうとす... 続きをみる
昔々、にんじん、ごぼう、だいこんの三人が、仲良く暮らしておった。ある日、三人で温泉に行くことになり、村の外れにある湯屋へと連れ立って出かけた。ぽかぽかとした湯にみんな大はしゃぎで、体をきれいにしようと、それぞれ体を洗い始めた。 にんじんはおしゃれで几帳面、しっかりと体を洗って、湯にもじっくり浸かっ... 続きをみる
激しい吹雪が過ぎた朝、雪原に倒れていた子どもは、遠くから聞こえる人の声に気づいて目を開いた。体の上には赤い毛布が掛かり、その周囲には雪童子が集めた柔らかな雪が風よけのように積もっていた。子どもは寒さに震えながらも、まだ生きていた。 雪の上に立てられた木の枝を見つけた村人たちは、その近くに倒れている... 続きをみる
寒風吹きすさぶ冬の朝。長屋の与太郎は、大家の指図で薪を買いに行くことに。だが金は一文も渡されず、「勘定は“つけ”で頼め」とのこと。「つけだなんて、ちょいと気が引けるな」と与太郎は呟きつつも、仕方なく薪屋へ向かう。 薪屋の店先では、主人がせっせと薪を束ねていた。与太郎は恐る恐... 続きをみる
連日の猛暑で、私は「命を守るためだ」と冷房を強くし、冷蔵庫にはアイスと冷たい飲み物を詰め込んだ。妻は電気代の明細を見ながら、「その食欲まで冷やせませんか」と言う。私は聞こえないふりをして、二本目のアイスに手を伸ばした。 そこへ小さな地震が来た。私は慌てて非常持出袋を点検し、水、懐中電灯、乾パンを詰... 続きをみる
昔むかし、ある国に、**赤神(あかがみ)と黒神(くろがみ)**という二人の神さまが住んでいた。赤神は情に厚く、心優しい神で、黒神は厳格で、善悪に厳しい神だった。二神は山の中で人々を見守っていたが、あるとき「どちらの教えが人を幸せに導くのか」で争うようになった。そこで、二人はある村に試練を与えて、そ... 続きをみる
町から帰る子どもは、雪婆んごが起こした激しい吹雪の中を必死に歩いていた。風は顔を打ち、雪は道も足跡も覆い隠していく。子どもは荷物を抱え、家の方角を確かめようとするが、白い景色の中では何も見分けられない。遠くでは雪童子たちが、吹雪に巻かれる子どもの姿を心配そうに見守っていた。 吹雪はさらに強まり、子... 続きをみる
春の午後、陽気に誘われて江戸の若旦那がぶらりと出かける。道すがら、「あくびの指南所」という珍妙な看板を目にし、好奇心から中へ入る。出てきたのは歳の頃五十ばかりの渋い男。「あくびを教える?冗談じゃねぇ」と思いつつも、話のタネにと指南を受けてみることに。 指南役、「まずは自然に、心から眠くなるように」... 続きをみる
むかし、ある村の近くに川があり、川辺には河童(かっぱ)が住んでいると噂されていた。村人たちは川を恐れ、近づこうとしなかったが、ある年の夏、貧しい百姓の男が魚を獲りに川に入ったところ、足を滑らせて深みにはまり、もがいているうちに何かに足を引っぱられた。気づくと、背後には本当に河童が現れていた。 男は... 続きをみる
雪雲の奥に住む雪婆んごは、水仙月の四日にふさわしい激しい吹雪を起こそうとしていた。雪童子たちを呼び集め、野原を通る者を雪で包み、道を分からなくするよう命じる。雪童子たちは風に乗り、白い野原へ飛び出した。 雪童子たちは雪の中を駆け回り、風をうならせ、粉雪を空高く巻き上げた。野原も道もたちまち白く消え... 続きをみる
ある町の若旦那、教養が自慢で、漢文や唐詩をすらすらと書くのが得意。長屋の者たちは「唐様の若旦那」とあだ名をつけて、感心半分、からかい半分で見ていた。 ある日、その若旦那が書道の披露として、立派な掛け軸を長屋に見せに来る。「天高く馬肥ゆる秋」など、見事な筆致に皆ため息――だが、意味は誰もよく分からな... 続きをみる
むかし、ある山里に、心のやさしい若夫婦と年老いたお婆さんが三人で仲良く暮らしていました。年をとったお婆さんは、足腰が弱くなり、家のこともできなくなってきましたが、夫婦は「長生きしてくれるだけでありがたい」と笑顔で世話をしていました。 ある日、お婆さんは急に体が軽くなり、顔つきも若返っていくような不... 続きをみる
水仙月の四日、山里は朝から冷えこみ、空も雪を含んだように白く沈んでいた。子どもは家の用を言いつかり、町へ続く雪道を一人で歩き出す。遠くの山は青くかすみ、静かな景色の中に、冬のきびしさがひそんでいた。 道の両側には雪をかぶった木々や畑が広がり、足音だけがかすかに響く。子どもは寒さに肩をすぼめながらも... 続きをみる
長屋に住む一人の博打打ちの男。つきも運も尽き果て、賽(さい)を振っては外れ目ばかり。暮らしは傾き、財布はすっからかん。ある日、神社の境内で腰を下ろしていたところ、どこからともなく現れた白髪の老人が声をかけてくる。「あんた、よほど運がないようじゃな」。そう言うや、老人は懐から不思議な賽を取り出す。そ... 続きをみる
昔、山の噴火で畑が火山灰に覆われ、作物の実らなくなった村があった。ある寒い夕暮れ、腹をすかせた旅人が村へたどり着き、食べ物と一夜の宿を求めて家々を訪ねた。しかし、村人たちにも余裕はなく、誰も旅人を助けようとしない。庄屋は、大切な畑の大根を盗めば、火山灰に残った足跡をたどって代官所へ突き出すと言い放... 続きをみる
ある冬、小十郎は猟のため、雪深いなめとこ山へ入った。家族を養うには熊を撃つほかなかったが、熊への申し訳なさは消えない。激しい吹雪の中、小十郎は鉄砲を背負い、足跡を探して山奥へ進んだ。やがて大きな熊の姿を見つけ、静かに銃を構えた。 小十郎が狙いを定めた瞬間、足元の雪が崩れ、体勢を失った。熊は逃げず、... 続きをみる
ある町の長屋に住む与太郎、ある日風呂屋の帰りに町角で侍に呼び止められる。侍は真顔でこう問う。「そち、“睾玉”とは何ぞや?」与太郎は面食らい、「えぇと…金玉(きんたま)で?」と即答。侍はそれを聞いて深くうなずき、「なるほど、それがしの解釈と同じであったか」と満足... 続きをみる
昔、ある村に惣兵衛(そうべえ)という男が住んでいた。彼は働き者だが、何をしてもどこか抜けていて、村人たちは「そこつ(=そそっかしい)」と笑っていた。米俵を運べば転び、薪を拾えば水に落ち、常に何かやらかしていたが、本人はいたって陽気で気にしない。 ある日、惣兵衛は「一旗揚げてくる!」と突然言い出し、... 続きをみる
小十郎は仕留めた熊の皮と熊の胆を背負い、雪深い山を下って町へ向かった。家には食べ物を待つ家族がいる。熊を撃つことに胸の痛みを感じながらも、それ以外に暮らしを支える仕事はなかった。重い荷物を担ぎ、小十郎は黙って商人の店を目指した。 町の商人は熊の皮を広げ、傷がある、毛並みが悪いなどと言って安い値をつ... 続きをみる
31.立川談志(たてかわ ・だんし)「 7代目」 生年月日昭和11年1月2日 没年月日平成23年11月21日 享年:75歳 立川談志(たてかわ だんし) 本名松岡 克由(まつおか かつよし) は、昭和から平成にかけて活躍した日本の落語家であり、政治家でもありました。1936年(昭和11年)に東京都... 続きをみる
昔々、ある村では、長く雨が降り続いていました。田畑は水に浸かり、作物は腐り、村人たちは困り果てていました。そんなある日、一人の若者が「この雨は神の怒りかもしれない」と考え、天に祈りを捧げました。すると夢の中に天の神が現れ、「この雨は“水の種”が地に落ちたためだ」と語り、「種... 続きをみる
小十郎は、なめとこ山の奥で一頭の大きな熊と出会った。熊は逃げようとせず、落ち着いた目で小十郎を見つめている。鉄砲を構えた小十郎は、その堂々とした姿に心を打たれ、すぐには引き金を引けなかった。山の静けさの中で、人と熊は言葉のないまま向き合った。 やがて熊は、人間の言葉を話すように小十郎へ語りかけた。... 続きをみる
江戸の裏長屋に住む職人風の男、金兵衛。長屋暮らしの気風者であるが、頑固者でもある。ある日、ひとり息子の亀吉が、道すがら漂ってきた香ばしい鰻の蒲焼きの匂いにすっかり魅せられてしまい、「一度でいいから、あのうなぎを食べてみたい」と親にねだる。だが金兵衛は、「あんな贅沢なもの、庶民の口に合うもんじゃねえ... 続きをみる
むかしむかし、ある山村に牛方(うしかた)という牛使いの男がおりました。ある日、山奥の町へ薪を売りに出かけ、夕方になって帰る途中、山道で日が暮れてしまいました。あたりは薄暗くなり、牛方は「この先には山んばが出るというが……」と少し不安になりながらも、牛を引いて急ぎました。... 続きをみる