36.日本おとぎ噺 「しょじょ寺の狸ばやし」
むかしむかし、武蔵の国に「しょうじょじ(証城寺)」という古いお寺がありました。ある秋の夜、和尚(おしょう)さんが一人、本堂で晩酌を楽しんでいました。夜も更け、虫の音が響く中、和尚はふと思いつき、「こんな夜に狸が踊りに来るという話があるが、どうせ迷信だろう」と笑って一人言をこぼしました。

そのとき、どこからともなく「ぽんぽこぽんぽこ」と腹鼓の音が聞こえてきました。和尚は酔いのせいかと思いましたが、耳を澄ますと確かに音が近づいてきます。やがて、音に合わせて笛や太鼓の調べまで聞こえ、寺の庭には、提灯をぶらさげた狸たちの行列が現れたのです。彼らはにぎやかに踊り、まるで祭りのように騒いでいました。

驚いた和尚でしたが、怖がるよりも「これは珍しい!」と面白がり、自らも笠をかぶって庭に出ていきます。そして狸たちの輪の中に加わり、一緒に踊り出したのです。狸たちは最初こそ驚きましたが、やがて打ち解け、和尚と楽しく踊り明かしました。宴は夜通し続き、笑い声と音楽が山中に響き渡りました。

夜が明けるころ、狸たちはふっと姿を消しました。和尚は夢でも見たのかと首をかしげつつも、心温まる夜だったと笑いました。それ以来、毎年秋になると、しょうじょじの森からは
「ぽんぽこぽん」と腹鼓の音が聞こえると人々は言います。それが「しょうじょじの狸ばやし」と呼ばれ、今でも語り継がれているのです。

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