38.『古典落語』「芝浜(しばはま)」
江戸の魚屋・勝五郎は腕はよいが、大酒飲みで朝寝坊。商いを怠けては女房を困らせていた。ある未明、女房に起こされ、しぶしぶ芝浜へ仕入れに向かう。ところが魚河岸にはまだ人影がなく、浜辺を歩いていると革の財布を拾う。中には大判小判がぎっしり。勝五郎は夢中で家へ駆け戻った。

大金を手にした勝五郎は、「もう働かなくても暮らせる」と大喜び。近所の仲間を呼び集め、朝から盛大な酒盛りを始めた。酒や肴を惜しげもなく振る舞い、酔いつぶれて眠ってしまう。翌朝、財布のことを女房に尋ねると、「そんな物は知らない。浜へ行ったのも夢ではないか」と言われ、青ざめる。

夢で大金を拾ったと思い込み、酒代だけが借金として残った勝五郎は深く恥じる。「酒に溺れていたから、こんな夢を見るのだ」ときっぱり酒を断ち、魚屋の仕事に精を出す。夜明け前から河岸へ通い、威勢のよい声で魚を売るうちに評判も上がる。数年後には借金を返し、店を構えるほど立派になった。

大みそかの夜、女房はあの日の財布を勝五郎の前へ差し出す。大金は夢ではなく、拾得物として役所へ届け、持ち主が現れなかったため戻ってきたのだった。女房は、金を渡せば夫が駄目になると思い、夢だと偽ったと涙ながらに詫びる。勝五郎は女房を許すが、勧められた酒には手を出さず、「よそう、また夢になる」と笑う。

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