語り継ぐこころ/日本おとぎ噺・江戸小咄・古典落語・笑いの匠たち

日本おとぎ噺・江戸小咄、古典落語・笑いの匠たちのダイジェスト版と挿絵です。たまに、私の与太話が入ります。 文も挿絵もChatGPTが作っています。   よかったら ★nice! をポチット押してね。

88.日本おとぎ噺 「カジカのびょうぶ」

100えんメガネ

むかし、伊豆の上狩野に、広い田畑や山を持つ菊三郎という男がいた。悪人ではなかったが大変な怠け者で、先祖の財産を次々と売り払い、とうとう最後の山まで手放そうとした。山の様子を見に入ると、杉木立の奥に澄んだ沢があり、美しい声で鳴くカジカたちが群れていた。歩き疲れた菊三郎は、大きな岩の上で眠り込んだ。



夢の中へ、全身を水に濡らした不思議な老人が現れた。老人はカジカたちの頭領で、「この山が売られれば沢を追われ、仲間は生きていけません。どうか、かじか沢だけは残してください」と涙ながらに頼んだ。目を覚ました菊三郎の手には、冷たい水が付いていた。沢に響くカジカの声を聞くうち、菊三郎は山を売らないと心に決めた。



菊三郎は山を守るため、家財道具をすべて売り、手元には何も描かれていない白い屏風だけが残った。ところが翌朝、屏風には美しい沢と杉林、楽しげに鳴くカジカたちが描かれていた。高値で買いたいという者が大勢訪れたが、菊三郎は決して売らなかった。それから心を入れ替えて懸命に働き、田畑を買い戻し、貧しい人々も助ける立派な主人となった。



長い年月が過ぎ、八十を越えた菊三郎は病の床に伏していた。そこへ殿様の家老が現れ、断る菊三郎を押しのけて屏風を持ち去ろうとした。その時、描かれていたカジカたちが次々と屏風から抜け出し、沢の方角へ帰っていった。屏風は元の白さに戻った。菊三郎は「長い間ありがとう。沢で仲よく暮らせよ」と微笑み、静かに息を引き取った。