「私の与太話」「主治医」
私はお医者さんとの付き合いが長い。総合病院というところはありがたいもので、一人の先生から紹介状が出ると、腎臓内科、消化器内科、眼科、脳外科と、まるで病院内の名所巡りである。診察券一枚で、体じゅうを各科の先生方に預けて歩くことになる。

ところが、先生が増えると注意も増える。腎臓の先生は「野菜も取りすぎは困ります」と言う。糖尿の先生は「甘いものは控えましょう」。血管の先生は「脂っこい肉はよくない」。牛乳も、腎臓や血管を思えば飲みすぎるなと言われる。聞けば聞くほど、食卓の品が一つずつ消えていく。

家へ帰って茶碗を前にすると、箸が迷子になる。野菜はだめ、甘いものはだめ、肉もだめ、牛乳もだめ。では魚かと思えば塩分が気になり、ご飯かと思えば糖分が気になる。水を飲もうにも、飲みすぎるなと言われたような気がしてくる。しまいには、食べ物より注意書きで腹がいっぱいになる。

そこで私は考えた。ここまで体のことを各科の先生が見てくださるなら、いっそ食事も病院で決めてもらえばよい。朝は腎臓内科、昼は糖尿の先生、晩は脳外科の献立である。だが困るのは、先生方の意見が違った時だ。結局、私の今日の献立は――紹介状一枚、薄味で。

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