語り継ぐこころ/日本おとぎ噺・江戸小咄・古典落語・笑いの匠たち

日本おとぎ噺・江戸小咄、古典落語・笑いの匠たちのダイジェスト版と挿絵です。たまに、私の与太話が入ります。 文も挿絵もChatGPTが作っています。   よかったら ★nice! をポチット押してね。

「年寄りの与太話」「仕事が嫌い」

100えんメガネ

男はいつも胸を張って言っていた。
「私は実に幸運な人生を送っております」

周囲は「さぞ仕事ができたのでしょう」と感心する。すると男は首を横に振った。

「いえ、仕事はほとんどしておりません」

男は若いころから五回も職を変えている。しかも不思議なことに、辞めた翌日にはもう次の会社で入社の挨拶をしていた。景気の良い会社ばかり渡り歩き、履歴書だけは立派だったのである。

しかし本人いわく、
「会社へ行くと、“今日はどうやって一日を潰そうか”しか考えていないんです」

同僚は呆れたが、男はどこ吹く風だった。

ところが奇妙なことが起こる。

男が入った会社は、最初こそ羽振りがいい。社長は威勢がよく、営業は肩で風を切り、ボーナスの話ばかりしている。

だが男が机に座り始めると、だんだん雲行きが怪しくなる。

男は仕事をしない。
資料を開けば昼寝。
会議では返事だけ。
電話が鳴れば、近くの者が取るのを待つ。

すると半年、一年と経つうちに、なぜか会社の業績が落ち始めるのである。

「お前が疫病神なんじゃないか」

同僚に冗談でそう言われるころには、会社は赤字。やがて倒産。

男はそのたび、少し前に退職届を出し、また別の景気の良い会社へ移っていった。

もっとも、四番目の会社だけは潰れていない。

その会社で人員整理の話が出た。男は敏感だった。

「これは危ない」

そう思うや、自主退職して逃げ出した。すると会社は持ち直し、今でも残っている。

五番目の会社でも同じだった。
不穏な気配を察すると、男はすぐ辞めた。

だから本人は得意げに語る。

「私は危機管理能力だけは高いんです」

友人が呆れて尋ねた。

「しかしお前、一度も失業保険もらってないんだろ?」

男は湯呑みを置き、しみじみと言った。

「ええ。退職した翌日には次の会社で朝礼してましたから」

そして少し考え込み、深くうなずいた。

「……今思えば、一番働かなかったのは失業保険かもしれませんな」