52.日本おとぎ噺 「座頭の木(ざとうのき)」
昔、ある村に座頭(ざとう)――目の見えない旅芸人の男がいた。三味線を背負い、村から村へと渡り歩いては、その音色と語りで人々を楽しませていた。ある年の冬のこと、とある山道の茶屋に立ち寄った座頭は、そこで偶然、旧知の村人と出会う。

座頭は村人に「この先の峠道は雪が深くて危ない。泊まっていけ」と勧められるが、「慣れているから大丈夫」と答え、夜道を進むことに。しかし山は静まり返り、雪もちらつくなか、座頭は不意に足を滑らせて倒れてしまう。痛む足を引きずりながらも、なんとか進もうとする。

しばらく進むと、どこからか足音が聞こえ、数人の男たちが現れる。彼らは顔を隠し、無言で座頭を囲むと突然殴りかかってきた。理由も分からぬまま、座頭は持ち物を奪われ、吹雪の中に置き去りにされてしまう。傷つき、倒れた彼を、やがて朝の光が照らす。

その場所に後日、村人たちが祠(ほこら)を建て、倒れていた木に「座頭の木」と名をつけ、供養するようになったという。それ以来、その木のそばを通る者は、三味線のような音が風にまぎれて聞こえることがあると言われている。座頭の哀しみと祈りが、木霊のように残っているのかもしれない。

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