55.日本おとぎ噺 「キジも鳴かずば(きじもなかずば)」
むかしある山里に、まじめで働き者の男が暮らしていた。ある日、山で薪をとっていると、何とも言えぬ悲しげな鳥の声が聞こえてきた。不思議に思って声の方へ行くと、木の枝に傷ついた一羽のキジが鳴いていた。男は哀れに思い、自分のむすび飯をちぎって与え、やさしく手当てをしてやった。

翌日、男が山へ行くと、なんと前日と同じ場所で、山菜やきのこ、魚がきれいに揃えられて置かれていた。男は不思議に思いながらもありがたく持ち帰った。それからも毎日、同じように山の恵みが置かれていた。村人たちは「山の神様の恩返しじゃ」と噂し、男はますます感謝の心を忘れず、静かに暮らしていた。

この話を聞きつけた欲深な隣村の男が、「それならわしも」と真似をし、無理やりキジを捕まえてけがをさせ、「助けてやったぞ」と餌を投げつけた。しかし次の日、山には何もなく、逆に男の持ち物がどんどん失われていくようになった。やがて男は「キジが鳴いたせいで、山の神に知られてしまった」と言って、キジを逆恨みするようになった。

結局、悪人の男は村からも追われ、みすぼらしい姿で山をさまようようになった。山の神の怒りを買ったのだと村人たちは語り継ぎ、**「キジも鳴かずば撃たれまい」**ということわざが生まれた。だが、キジは鳴くしかなかったのだ。善を尽くす者には恵みが、欲に駆られた者には罰が下る――そうして村人は今も山に感謝しながら暮らしているという。

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