17.『日本おとぎ噺 』「鶴の恩返し」
むかしむかし、雪深い村に一人の若者が住んでいました。ある寒い日のこと、山道で罠にかかった一羽の鶴を見つけます。羽は血に染まり、今にも命絶えんばかり。若者は「こんな寒さでは死んでしまう」と言い、罠を外して鶴を放してやりました。鶴は一度こちらを見つめると、空高く飛び去っていきました。

数日後、吹雪の夜に「こんな晩に申し訳ありません」と、ひとりの美しい女が戸を叩きました。行くあてもないという彼女に、若者は「泊まっていきなさい」とあたたかく迎え入れます。やがてふたりは夫婦となり、つましいが幸せな日々が始まりました。
ある日、女は「機を織りたい」と言い出します。そして「決して、織っているところは見な
いでください」と告げます。若者は不思議に思いつつも、約束を守ると誓います。

女は部屋にこもり、何日も何日も機を織り続けます。すると、とても美しい布が織りあがりました。若者はその布を売って生計を立て、貧しい暮らしは少しずつ楽になっていきます。
しかし日が経つごとに、女の顔はやつれていきました。不安にかられた若者は、ついに織り部屋をのぞいてしまいます。そこには、見覚えのある一羽の鶴が、自分の羽を抜きながら機を織っていたのです。

秘密を知られた女は静かに立ち上がり、「私は、あの日助けていただいた鶴です」と告げます。「せめてお恩を返したくて人の姿になりました。でも、もうここにはいられません」と涙を浮かべて言いました。
若者は何も言えず、ただ泣きながら見送ります。鶴はひと声鳴くと、空高く飛び去っていきました。その後、若者は鶴のことを思い出しながら、誠実に生きていったといいます。

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