51.日本おとぎ噺 「旅人馬(たびびとうま)」
昔、ある村に心優しい馬子(うまご=馬を使う旅人)が住んでいた。
彼の連れていた馬は、年老いて足も弱り、荷を運ぶにも苦労するほどだったが、馬子はけっして手放さず、大切に世話していた。ある日、旅の途中で村人に笑われても、「この馬は家族のようなもの」と言って笑って答えた。

ある晩、峠道で日が暮れ、馬子は老馬と山の中で野宿することになった。寒い夜、馬子は自分の上着を馬にかけ、焚き火のそばで寄り添うようにして休んだ。その夜、馬子の夢に見知らぬ老人が現れ、「おぬしの心根、しかと見届けたぞ」と不思議なことを言い残して去った。

朝になると、老馬はまるで若返ったかのように元気を取り戻していた。毛艶も良く、力強く荷を運び始める。それだけではない。道中、馬子はなぜか次々と仕事に恵まれ、金回りも良くなっていった。人々は「馬に福の神が宿ったのでは」と噂した。

やがて馬子は立派な馬宿を営むようになった。老馬は引退し、草の多い野でのんびりと暮らしたという。村人たちはその馬子の誠実さと、老馬への思いやりが福を呼び寄せたのだと語り伝え、「旅人馬の福話」として今も村に残っている。

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