27.日本おとぎ噺 「貧乏神と福の神」
むかしむかし、ある村に正直者の男が住んでいた。貧しくとも愚痴ひとつ言わず、毎日コツコツ働いて暮らしていた。ある晩、男の家に奇妙な客が現れる。それは「貧乏神」と名乗るやせ細った男だった。
「ここに居候させてくれ」と頼まれた男は、あっさりと了承し、「お前も腹が減っておるのか、まあ食っていけ」と笑って団子を差し出す。

貧乏神は感激し、「お前のような優しい人間は初めてだ」と目を潤ませる。
その日から、貧乏神は毎晩、男の寝床の隅にうずくまり、静かに過ごした。不思議なことに、翌日から男の周りには良いことが続く。川で大きな魚が獲れ、山で薪が豊富に見つかり、隣人たちもなぜか親切になっていく。

ある晩、再び誰かが戸を叩く。現れたのは、立派な装束をまとった「福の神」だった。
「この家にはもう貧乏神が居る。さあ出ていけ」と福の神は言う。しかし男は迷いもせず、「長く一緒に過ごしたあの人を、追い出すわけにはいかない」と答える。福の神はしばし沈黙し、やがて静かにうなずいた。

翌朝、福の神は去ることなく、貧乏神と並んで朝の陽を浴びていた。福の神は言った。「お前の心が真に豊かであったから、我もここに住もう」。
それから男の家はますます栄え、村一番の笑顔あふれる家となった。貧乏神も、やせ細っていた姿から、ふっくらとした福々しい姿になっていった。

このブログへのコメントは muragonにログインするか、
SNSアカウントを使用してください。