15.『古典落語』「子別れ(こわかれ)」
八五郎は、酒に溺れては家に金も入れず、博打と喧嘩に明け暮れる日々。ついには堪忍袋の緒が切れた女房、おたかが三行半を突きつけ、幼い息子・亀吉を連れて実家へ帰ってしまう。「出てけ!」と言われたときの八っつぁんの負け惜しみと空元気、しかしその実、胸の奥ではポッカリと大きな穴が開いたような淋しさを感じていた。

それからというもの、八五郎は心を入れ替える。酒も博打も絶ち、日雇いの仕事をこなしながら真面目に生きる日々。時折、町で見かける親子連れに胸を締めつけられ、「あいつは元気でやってるか」と思いを馳せる。ある日、偶然立ち寄った団子屋で、見覚えのある少年が目の前に。まぎれもなく、亀吉だった。息子の姿に、八っつぁんの目は思わず潤む。

団子を奢ってやると、亀吉は無邪気に笑い、父を「おとっつぁん」と呼ぶ。時の流れはあれど、親子の絆は消えてはいなかった。話の中で、亀吉が「母さんも、おとっつぁんのこと、悪くは言ってなかったよ」と漏らす。八っつぁん、胸を突かれながらも「今の俺なら、きっともう一度やり直せる」と小さくつぶやく。その言葉が、空にゆるりと浮かぶ凧のように、希望を含んでいた。

後日、おたかのもとを訪ね、頭を下げる八五郎。最初は戸惑うおたかだったが、今の八五郎の真摯な姿を見て、ふと表情が和らぐ。「亀吉のために…もう一度、一緒に暮らしてみようかね」。涙ぐむ八五郎は、そっと息子の小さな手を握る。江戸の町には、夕焼けとともに親子三人の影が寄り添って伸びていく――。

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