30.日本おとぎ噺 「牛若丸(うしわかまる)」
昔々、京の町の外れに、**牛若丸(うしわかまる)という美しい少年がいました。牛若丸は、亡き父の志を胸に、山深い鞍馬寺で修行の日々を送っていました。ある晩、山の杉林で剣の稽古に励んでいると、赤ら顔に長い鼻の大天狗(だいてんぐ)**が現れ、「お前に秘剣を授けよう」と告げます。こうして、牛若丸は空を飛ぶ術や身のこなし、剣術を天狗たちから学び、類い稀な武芸者へと育っていくのです。

時が経ち、牛若丸は山を下り、京の町へと戻ってきます。母の待つ家に戻った彼は、夜ごと剣の稽古を続けながら、心に誓いを抱いていました。「この剣は、弱き者を守るために振るおう」と。そして、ある夜――月の明るい晩のことです。**「京の五条の 橋の上♪ 牛若丸は 弁慶と〜」**という今に伝わる歌の通り、橋の上に、大きな武者・弁慶が立ちふさがりました。「千本目の太刀を奪ってやる!」という弁慶に、牛若丸は涼しい顔で立ち向かいます。

弁慶は太く重い薙刀をふるいますが、牛若丸は風のように舞い、軽やかにかわしてゆきます。やがて、牛若丸の一太刀が弁慶の肩を打ち、薙刀が地に落ちました。敗れた弁慶は地にひざまずき、「これほどの者が世にいようとは…。この命、お前に預け申す」と言います。牛若丸はにっこりと笑い、「では、共に歩もう。そなたの力、頼りにしているぞ」と言いました。かくして、二人は主従の誓いを交わすのです。

それからというもの、牛若丸と弁慶は、いつも一緒。都の人々は、五条の橋で見かける二人を「まるで月と岩」と噂しました。牛若丸はやがて、世に名を上げる運命にありますが、それはまた別の話。――こうして、山の天狗に鍛えられ、橋の上で弁慶と出会った牛若丸の物語は、京の町から町へと語り継がれ、今も子どもたちの夢に生きているのです。

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