13.『古典落語』「のめる」
江戸の町、酒好きで知られる八五郎が、長屋仲間に「おれは酒にめっぽう強い」と吹聴する。誰もが「八っつぁんはのめる(=呑める)」と太鼓判を押すほどの酒豪だ。ある日、ご隠居が「本当にどれだけ呑めるのか、一度試してみたいもんだねぇ」と呟いたのがきっかけで、皆の前で“のめる”実力を披露することに。

町内の一杯飲み屋に席を設け、「さあ呑んでごらん」と皆が見守るなか、八五郎はぐいぐい酒をあおる。最初は陽気に噺をしながら進んでいたが、盃が進むにつれ顔が赤くなり、言葉も怪しくなってくる。だが本人は「まだまだいける、のめるんだ」と強がる。見物人たちは「こりゃ酔ってるぞ」「もうやめとけ」と心配するが、八五郎は止まらない。

やがて八五郎、ついに足元もおぼつかず、箸もうまく握れず、「のめる、のめる」と繰り返しながらも、顔は真っ赤。とうとう天井を見上げながら「……の、のめる……」と呟き、そのままゴロンと大の字に倒れる。皆は呆れつつも大笑い。「のめるんじゃなくて、“のまれた”じゃねぇか!」とツッコミが飛ぶ。

翌朝、頭を抱えて目を覚ました八五郎。ご隠居が茶を差し出しながら、「どうだい、昨日の“のめる”ぶりは」と笑う。八五郎は苦笑いしながら「いやぁ、のめるにはのめたが、翌日がつらい。これが“のむってこと”かねぇ」とボソリ。江戸っ子の見栄と笑い、そして“呑んべぇ”の哀愁がにじむ一席。長屋には今日も、笑い声がこだまする―

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