48.日本おとぎ噺 「大工と鬼六(だいくとおにろく)」
昔、ある山奥の村に名の知れた腕の良い大工がいた。ある日、その大工が山を越えて寺の橋をかけに行く仕事を請け負うことになったが、橋の工事は難しく、なかなかうまくいかない。困り果てた大工が山の中でため息をついていると、突如として真っ赤な顔の大男が現れた。なんとそれは鬼だった。鬼は「橋を一晩で完成させてやる。ただし完成したら、お前の目玉をよこせ」と言う。大工は悩みつつも、仕事を果たすためにその約束をのんだ。

翌朝、目を覚ました大工が現場に行くと、見事な橋がかかっていた。木の継ぎ方も見事で、人間業とは思えぬ出来栄えだった。大工は驚きながらも、恐怖に震える。「約束どおり、目玉をいただこう」と鬼が現れたとき、大工はとっさに「名前を言い当てられたら目玉をやろう」と言う。鬼は面白がって了承した。大工は山に住む者から鬼の名を探ろうとするが、誰も知らない。困った大工が谷あいの道を歩いていると、岩の隙間から鬼の妻の声が聞こえた。「鬼六、鬼六、橋をかけた褒美に、今夜は目玉が手に入るねぇ」。そのとき初めて鬼の名が「鬼六」と知れる。

橋の完成を喜ぶ村人たちの中、大工は再び鬼六と対峙する。「さあ、目玉をよこせ」と言う鬼六に、大工は落ち着いて言った。「お前の名は鬼六だろう?」驚いた鬼は「なぜそれを!」と叫び、しばらくして、くやしそうにその場を立ち去った。こうして、大工は命をとられずに済んだ。

その後、大工はこの話を人々に語り、「知恵で鬼を退けた男」として評判となった。鬼六はというと、それ以降、山にこもって出てこなくなったという。橋は今も残り、人々は「鬼六橋(おにろくばし)」と呼んで、子どもたちにこの昔話を語り継いでいる。

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