44.日本おとぎ噺 「絵姿女房(えすがたにょうぼ)」
昔、ある村に若者の絵師が住んでいた。腕は立つが貧しく、妻も子もいなかった。ある日、絵師はふと「理想の女性を絵に描いてみよう」と思い立つ。思いを込めて描いたその女の絵は、優しく微笑む美しい姿だった。絵師は日に日にその絵に惹かれていき、「こんな女房がいたら」と話しかけるようになった。

ある夜、絵師がうたた寝をしていると、誰かが戸を叩く音がする。不思議に思いながら戸を開けると、そこには絵に描いたそのままの美しい女が立っていた。「絵師さま、どうか私をおそばに」と語る女。驚く絵師だったが、女を迎え入れる。以来、二人は夫婦のように暮らし、絵師の生活も豊かになっていく。

村人の間でも「絵師の家に、たいそうな女房がいる」と噂になる。ある日、絵師が外出中に、近所の者が女を訪ねて来る。女は応じるが、その直後、姿を消してしまう。絵師が戻ると、女の姿はなく、屏風の中の女の絵もまた空白になっていた。絵師は声を上げて泣き崩れる。

その後、絵師は再び絵を描くことはなくなったが、屏風は大切に飾られていた。誰も近づこうとせず、絵師も一人静かにその前で暮らし続けたという。村人たちは、「あの絵には、魂が宿ったのだ」と語り継ぎ、やがて女を“絵姿女房”と呼ぶようになった。

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