40.日本おとぎ噺 「髪長姫(かみながひめ)」
昔々、ある村に身寄りのない老夫婦が住んでおりました。子どもに恵まれなかったふたりは、神さまに毎日お祈りをしていました。するとある晩、老夫婦のもとに夢のお告げがあり、「川のほとりに行けば、授かるものがある」と告げられます。翌朝、ふたりが川辺に行くと、大きな桃のような包みに包まれた赤子が流れてきました。驚きつつも感謝し、その子を大切に育てることにしました。

女の子はすくすく育ちました。髪は生まれた時から不思議と長く、腰を超えてなお伸び続けました。村人たちは彼女を「髪長姫(かみながひめ)」と呼び、その美しさと優しさに心を惹かれました。姫の長い黒髪には光が宿るように見え、人々は「神の子」とも噂しました。やがて姫の評判は都にまで届き、ある日、貴族の若者が姫を一目見ようと村を訪れます。

若者は姫に一目で恋をします。姫もまた心惹かれ、ふたりは文を交わすようになりました。しかし、身分の差ゆえ、姫は都へ行くことをためらいます。やがて若者は「必ず迎えに来る」と約束し、都へ戻りますが、病に倒れてしまいます。待ち続ける姫の髪はさらに伸び、やがて村の中を覆うほどになっていきました。人々は「姫の思いが髪に宿ったのだ」とささやきます。

ある夜、姫は神に祈りました。「この想いが人を癒す力になりますように」と。その後、姫の髪を使った布は、都で不治の病を癒す霊布となり、多くの人を救いました。髪長姫は姿を消しましたが、村には「祈りの泉」と呼ばれる場所が残り、今も人々が手を合わせます。姫の名は永く語り継がれ、やさしさと想いの象徴となったのです。

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