「私の与太話」「よいとまけの歌」
土木現場の朝。母は泥にまみれ、重い綱を引いて働いている。周囲の男たちに交じり、汗を流しながら、ただ一人の子を食べさせるために歯を食いしばる。掛け声は朝の空に響く。「エンヤーコーラ、エンヤーコーラ」。子どもはその姿を遠くから見て、恥ずかしさと寂しさを胸に抱く。

学校では、母の仕事をからかわれる。子どもは母の汚れた手や日に焼けた顔を思い出し、悔しさに黙り込む。だが家へ帰れば、母は何事もなかったように笑い、粗末な食卓を用意してくれる。その笑顔に、子は何も言えなくなる。土の匂いの残る母の手が、何より温かかった。

やがて子どもは成長し、世間に出る。苦しい時、負けそうな時、耳の奥によみがえるのは、母が働く現場の掛け声だった。「エンヤーコーラ、エンヤーコーラ」、泥の中で踏ん張る母の背中と、働く人々の力強い声。あの日恥ずかしいと思った記憶は、いつしか自分を支える誇りへと変わっていく。

母はもう若くない。子はようやく気づく。あの泥だらけの姿こそ、自分を育てた愛そのものだったのだと。貧しさも、からかいも、母の苦労も、すべては生きる力になった。今も心の奥で、あの ‟ヨイトマケの歌″ が聞こえる。子は静かに、母へ深い感謝を捧げる。

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