13.『江戸小咄』「御髭(おひげ)」
江戸の町、浅草の裏長屋に住む与兵衛(よへえ)は、年の頃は四十手前、独り身で、毎朝ていねいに髭(ひげ)を整えるのが日課という、ちょいと小粋な男である。町内では「髭の与兵衛」として親しまれ、子どもたちにも慕われていた。そんな彼に、ご隠居が声をかけた。 「与兵衛さん、その髭、どうしてそんなに見事なんで?... 続きをみる
語り継ぐこころ/日本おとぎ噺・江戸小咄・古典落語・笑いの匠たち
日本おとぎ噺・江戸小咄、古典落語・笑いの匠たちのダイジェスト版と挿絵です。たまに、私の与太話が入ります。 文も挿絵もChatGPTが作っています。 よかったら ★nice! をポチット押してね。
江戸の町、浅草の裏長屋に住む与兵衛(よへえ)は、年の頃は四十手前、独り身で、毎朝ていねいに髭(ひげ)を整えるのが日課という、ちょいと小粋な男である。町内では「髭の与兵衛」として親しまれ、子どもたちにも慕われていた。そんな彼に、ご隠居が声をかけた。 「与兵衛さん、その髭、どうしてそんなに見事なんで?... 続きをみる
むかし、山奥の村に、大きな淵(ふち)がありました。村人たちは「龍の淵」と呼び、決して近づきませんでした。というのも、その淵には、龍が棲んでいるという古い言い伝えがあったからです。ある年の夏、淵のそばの田んぼで農作業をしていた若者が、ふと水面に美しい光を見つけました。それはまるで龍の鱗のように、きら... 続きをみる
時は江戸の町暮れどき、辻々には提灯の灯がゆらめく頃。ある浪人が、世の荒波にもまれつつ、食うや食わずの暮らしをしておった。武士の誇りを胸に抱きながらも、刀を売り、酒に頼り、今や路地裏の長屋暮らし。隣近所も、物静かなその浪人を、どこか気の毒に思いながら、遠巻きに見ていた。 そんな折、長屋の婆さまが風邪... 続きをみる
むかしむかし、ある村に心優しいおじいさんとおばあさんが住んでいました。ふたりは貧しいながらも仲良く暮らし、周囲の生き物にも分け隔てなく愛情を注いでいました。ある日、一匹の白い犬がやってきて、老夫婦に懐きます。ふたりはこの犬を「シロ」と名づけ、まるで子どものように大切に育てました。 ある日、シロが庭... 続きをみる
昔、江戸の町に「しわい屋(しつこい性格の男)」とあだ名される商人がいた。何事につけても細かく、ケチで、くどい。商売相手を何度も値切り、交渉に時間をかけ、挙げ句には「少しでも得をせねば損」と信じて疑わぬ頑固者。周囲の者は相手をするのも疲れる始末。そんなある日、このしわい屋が、町内の馴染みの植木屋に声... 続きをみる
むかしむかし、山里に一人の貧しい男が暮らしていました。薪を割って売っては、わずかな銭を得るだけの暮らし。着るものも粗末で、毎日の食事もままなりません。それでも男は明るく、「いつか大きな幸せが訪れる」と信じていました。ある晩、男はふしぎな夢を見ます。夢の中で、立派な屋敷に住み、庭に咲く花を愛でながら... 続きをみる
むかしむかし、あるところに、仲睦まじく暮らすおじいさんとおばあさんがおりました。おじいさんは山へ柴刈りに、おばあさんは川へ洗濯に出かける、そんな穏やかな日々。ある日、おばあさんが川で洗濯をしていると、「どんぶらこ、どんぶらこ」と流れてくる大きな桃を見つけました。「まあ、なんと大きな桃じゃこと!」と... 続きをみる
ある山里の古寺に、優しい和尚が一人で住んでいた。寺は古びており、檀家も少なく、貧しい暮らしだったが、和尚は毎朝きちんと読経を欠かさなかった。そんなある日、ふらりと一匹の黒猫が寺に現れた。痩せてはいたが、どこか人懐こい様子。和尚は猫に餌をやり、「よく来たのう、檀家になってくれるのか」と笑って声をかけ... 続きをみる
連日の猛暑で、私は「命を守るためだ」と冷房を強くし、冷蔵庫にはアイスと冷たい飲み物を詰め込んだ。妻は電気代の明細を見ながら、「その食欲まで冷やせませんか」と言う。私は聞こえないふりをして、二本目のアイスに手を伸ばした。 そこへ小さな地震が来た。私は慌てて非常持出袋を点検し、水、懐中電灯、乾パンを詰... 続きをみる
江戸は神田の長屋に住む男、与太郎ならぬ「大工の八五郎」は、筋はいいがとにかく粗忽者。ある日、知り合いの旦那から「長屋の雨漏りを見てほしい」と頼まれ、はりきって出かけてゆく。現場に着くと、天井裏の梁(はり)に釘を打ち込むよう頼まれた。八五郎、道具箱を担いで屋根裏にのぼり、早速トントンと音を響かせる。... 続きをみる
ホモイが「貝の火」を家へ持ち帰ると、父母はその美しい宝に驚いた。玉は赤や青、金色の光を放ち、まるで小さな炎が貝の中で燃えているようだった。父は、正しい心を失えば光も失われると教え、大切に扱うよう諭した。 貝の火の評判は、たちまち森中へ広がった。狐や鹿、小鳥たちが次々とホモイの家を訪れ、珍しい宝を一... 続きをみる
昔、ある村の若者が、親に先立たれ一人で暮らしていた。真面目で働き者だったが、家が貧しく、なかなか暮らしは楽にならなかった。そんなある晩、夢の中にひとりの老人が現れ、「お前の苦労を見ておる。この先、あんばら闇に出る馬を捕まえれば、運が開けよう」と告げた。 夢から覚めた若者は、あんばらやみ――それは昼... 続きをみる
むかし、伊豆の上狩野に、広い田畑や山を持つ菊三郎という男がいた。悪人ではなかったが大変な怠け者で、先祖の財産を次々と売り払い、とうとう最後の山まで手放そうとした。山の様子を見に入ると、杉木立の奥に澄んだ沢があり、美しい声で鳴くカジカたちが群れていた。歩き疲れた菊三郎は、大きな岩の上で眠り込んだ。 ... 続きをみる
春の午後、陽気に誘われて江戸の若旦那がぶらりと出かける。道すがら、「あくびの指南所」という珍妙な看板を目にし、好奇心から中へ入る。出てきたのは歳の頃五十ばかりの渋い男。「あくびを教える?冗談じゃねぇ」と思いつつも、話のタネにと指南を受けてみることに。 指南役、「まずは自然に、心から眠くなるように」... 続きをみる
ある町の長屋に住む与太郎、ある日風呂屋の帰りに町角で侍に呼び止められる。侍は真顔でこう問う。「そち、“睾玉”とは何ぞや?」与太郎は面食らい、「えぇと…金玉(きんたま)で?」と即答。侍はそれを聞いて深くうなずき、「なるほど、それがしの解釈と同じであったか」と満足... 続きをみる
昔、ある村に「かみそり狐」と呼ばれるずる賢い狐が住んでいた。化けるのが得意で、人間をだましては笑っていた。とくに好物は髪の毛で、町の床屋からこっそり髪を盗んでは山へ逃げ帰るという奇妙な習性があった。人々は恐れてその狐に関わらぬようにしていた。 ある日、若い床屋の新米・市助(いちすけ)が狐に騙されて... 続きをみる
むかし、ある村の近くに川があり、川辺には河童(かっぱ)が住んでいると噂されていた。村人たちは川を恐れ、近づこうとしなかったが、ある年の夏、貧しい百姓の男が魚を獲りに川に入ったところ、足を滑らせて深みにはまり、もがいているうちに何かに足を引っぱられた。気づくと、背後には本当に河童が現れていた。 男は... 続きをみる
むかし、ある山里に、心のやさしい若夫婦と年老いたお婆さんが三人で仲良く暮らしていました。年をとったお婆さんは、足腰が弱くなり、家のこともできなくなってきましたが、夫婦は「長生きしてくれるだけでありがたい」と笑顔で世話をしていました。 ある日、お婆さんは急に体が軽くなり、顔つきも若返っていくような不... 続きをみる
昔、山の噴火で畑が火山灰に覆われ、作物の実らなくなった村があった。ある寒い夕暮れ、腹をすかせた旅人が村へたどり着き、食べ物と一夜の宿を求めて家々を訪ねた。しかし、村人たちにも余裕はなく、誰も旅人を助けようとしない。庄屋は、大切な畑の大根を盗めば、火山灰に残った足跡をたどって代官所へ突き出すと言い放... 続きをみる
数日後の朝、亮二の家の前に、山のような薪が積まれていた。さらに庭には、袋いっぱいの栗まで置かれている。祭りの夜、山男が叫んだ「薪百把と栗八斗を返す」という約束を、本当に果たしたのである。亮二と祖父は、思いがけない贈り物を前に驚いた。 ところが薪と栗は一度だけではなかった。夜になると山から強い風が吹... 続きをみる
家へ帰った亮二は、祭りの茶屋で団子代を払えず責められていた大男を助け、代わりにお金を置いたことを祖父に話した。さらに男が、薪百把と栗八斗を返すと叫び、山へ逃げていったことも伝えた。 祖父は、困っている人を見過ごさず、自分のお金を差し出した亮二の行いを褒めた。相手が町の人でも山男でも、苦しんでいる者... 続きをみる
祭りの晩、亮二は胸をはずませながら、村のにぎやかな通りへ出かけた。提灯の明かりがゆれ、太鼓や笛の音が夜気に流れ、屋台には団子や飴、見世物小屋が並んでいる。子どもたちも大人たちも浮き立ち、村じゅうがいつもと違う華やぎに包まれていた。 亮二は人ごみを縫うように進みながら、店先をのぞいて祭りの景色を楽し... 続きをみる
町から帰る子どもは、雪婆んごが起こした激しい吹雪の中を必死に歩いていた。風は顔を打ち、雪は道も足跡も覆い隠していく。子どもは荷物を抱え、家の方角を確かめようとするが、白い景色の中では何も見分けられない。遠くでは雪童子たちが、吹雪に巻かれる子どもの姿を心配そうに見守っていた。 吹雪はさらに強まり、子... 続きをみる
水仙月の四日、山里は朝から冷えこみ、空も雪を含んだように白く沈んでいた。子どもは家の用を言いつかり、町へ続く雪道を一人で歩き出す。遠くの山は青くかすみ、静かな景色の中に、冬のきびしさがひそんでいた。 道の両側には雪をかぶった木々や畑が広がり、足音だけがかすかに響く。子どもは寒さに肩をすぼめながらも... 続きをみる
小十郎は仕留めた熊の皮と熊の胆を背負い、雪深い山を下って町へ向かった。家には食べ物を待つ家族がいる。熊を撃つことに胸の痛みを感じながらも、それ以外に暮らしを支える仕事はなかった。重い荷物を担ぎ、小十郎は黙って商人の店を目指した。 町の商人は熊の皮を広げ、傷がある、毛並みが悪いなどと言って安い値をつ... 続きをみる
小十郎は、なめとこ山の奥で一頭の大きな熊と出会った。熊は逃げようとせず、落ち着いた目で小十郎を見つめている。鉄砲を構えた小十郎は、その堂々とした姿に心を打たれ、すぐには引き金を引けなかった。山の静けさの中で、人と熊は言葉のないまま向き合った。 やがて熊は、人間の言葉を話すように小十郎へ語りかけた。... 続きをみる
浅草の商い通り、今日も人波でにぎわっておりやす。なかでもひときわ賑やかな声がするのは、新参者の荒物屋。店先には“本日限り! 大安売り!”の大きな札がひらひら。若い店主が威勢よく声を張り上げ、桶だの笊(ざる)だの、何でも五文、十文で売ると聞いて、町内の婆さま方が群がっておりや... 続きをみる
ある夏の盛り、江戸の町を「ほうろく、ほうろく~」と売り歩く男がいた。ほうろく(焙烙)は、素焼きの土鍋で、火を使わず頭にかぶれば暑気払いになるという江戸の知恵。男は暑さにふうふう言いながらも、道ゆく人々に声をかけていた。「ほうろくひとつで涼しくなる、命が助かる一品でござんす!」 だが、なかなか売れぬ... 続きをみる
春の陽気な日和、上野の山では花見客でにぎわっていた。町人たちも晴れ着に身を包み、酒肴を広げて浮かれるなか、一人の浪人がぼろぼろの羽織をまとい、無言で人波をかき分けて歩いていた。肩には古びた風呂敷包み、腰には刀一本。子供たちが「お侍だ」と囁くが、その顔つきはどこか冴えず、場にそぐわぬ寂しさをまとって... 続きをみる
むかし、ある町の飴屋に、夜更けになると一人の女がやって来て、一文銭を出しては「飴をひとつください」と頼んだ。不思議なのは、いつも同じ着物で、顔色も青白く、生気が感じられないことだった。女は飴を受け取ると、静かに町の裏手の古寺の方へと消えていく。店の主人は気味悪く思いながらも、毎晩飴を売り続けた。 ... 続きをみる
昔むかし、ある山里に「猿神(さるがみ)」と恐れられる巨大な猿が棲んでいた。その猿神は毎年、村に若い娘を一人差し出すように命じ、人々は恐怖におののきながら従っていた。今年もまた、くじで選ばれた娘が猿神のもとへ捧げられることになり、村中が涙にくれていた。 そこへ旅の若者が通りかかり、事情を知って怒りを... 続きをみる
昔々、ある山里に、おじいさんとおばあさんが住んでいました。ふたりは畑仕事をして静かに暮らしていました。村人たちのあいだでは、山の奥の小川から「小豆(あずき)をとぐような音」が聞こえてくるという噂がありました。 「ザッ、ザッ…ザク、ザク…」と、夜になると聞こえてくるその音... 続きをみる
芝居町の路地裏、色町の花街では、芸者衆に囲まれて賑やかに立ち回る一人の男がおりました。名は彦三(ひこさ)、商売は牽頭持(たいこもち)。芸も口も達者で、座敷の場を和ませるその姿に、芸者も客も腹を抱えて笑うほど。 「粋な芸と気の利いた冗談、それがあっての夜の華よ」とは、町人の評判。 ある日、若旦那の連... 続きをみる
むかしむかし、天の神さまには、機織りが得意な美しい娘「織姫(おりひめ)」がいました。織姫は毎日、雲のようにふわりとした着物を織っては、天の神さまに仕えていました。娘の働きぶりを喜んだ神さまは、ある日、まじめで牛の世話に励む若者「彦星(ひこぼし)」を婿に迎えさせました。 織姫と彦星は結ばれると、うれ... 続きをみる
昔ある村に、貧しいながらも働き者で信心深い若者がいた。男は村はずれの古びた地蔵さまに、毎朝水を供え、米の飯をお供えして手を合わせていた。村の者は「そんなことしても腹はふくれぬぞ」と笑うが、男は「地蔵さまは見ておられる」と信じて疑わなかった。 ある年、村人たちは一斉に田植えを始めた。若者もせっせと田... 続きをみる
三十匹のあまがえるは、虫たちに頼まれ、草の実や美しい石、苔を集めて、小さな花畑や庭を造っていた。朝の金色の光から夕暮れまで、風の中で歌い、声を掛け合って働く毎日は、忙しくても楽しいものだった。ある日、仕事帰りの一行は、桃の木の下に新しく開いた酒屋を見つける。 酒屋のとのさまがえるは、珍しい外国の酒... 続きをみる
ある晩、少年の恭一は、ぞうりを履いて鉄道線路のそばを歩いていた。空には九日の月が浮かび、月光を含んだうろこ雲の間から、冷たい星が光っている。遠くの停車場には赤や紫の明かりがともり、夜の中に大きな城が立っているように見えた。静かな風と電線のうなりに包まれながら、恭一は不思議な夜道を進んでいった。 突... 続きをみる
五月の谷川。水底に暮らす二匹の蟹の子は、青白く揺れる水の光を見上げながら、「クラムボンは笑ったよ」「死んだよ」と不思議な話をしていた。泡は水銀のように流れ、日光の網が砂の上で揺れている。父蟹は、子どもたちの問いに静かに答え、川の中の穏やかな暮らしを見守っていた。 突然、青い光が水中を走り、一匹の魚... 続きをみる
オツベルの大きな農場では、多くの百姓が忙しく働いていた。そこへある日、真っ白な象が森から現れる。オツベルは驚きながらも、やさしい言葉で象を誘い、農場に置くことにした。象は人々と一緒に働けることを喜び、重い荷物を運び始める。明るい日差しの下、白い体は美しく輝いていた。 オツベルは次第に象へ無理な仕事... 続きをみる
町の活動写真館で、ゴーシュは楽団のセロを弾いていた。しかし演奏は遅れ、音も乱れ、楽長から毎日のように叱られていた。十日後には大きな音楽会がある。ゴーシュは夜になると、水車小屋のような古い家へ帰り、一人で何度も練習した。窓の外には畑が広がり、月の光と夜風だけが、ぎこちない音を聞いていた。 ある晩、練... 続きをみる
二人の若い紳士は、狩猟のため案内人と猟犬を連れ、深い山へ入った。しかし獲物は見つからず、猟犬も倒れ、案内人ともはぐれてしまう。冷たい風が吹く森をさまよううち、二人は「西洋料理店 山猫軒」と書かれた立派な建物を発見した。腹をすかせた二人は大喜びし、無料で食事ができる店だと思って、重い扉を開けた。 店... 続きをみる
貧しい家で病気の母を支えながら、活版所で働く少年ジョバンニは、学校でも孤独を感じていた。星祭りの夜、友人たちが川へ行くなか、彼は一人で町外れの丘へ登る。草の上に身を横たえ、天の川を見上げていると、風が吹き、空からまばゆい光が降り注いだ。気がつけば、ジョバンニは星空を走る列車の中にいた。向かいの席に... 続きをみる
九月一日、谷川沿いの小さな学校へ、高田三郎という赤い髪の少年が転校してきた。見慣れぬ洋服を着て、どこか町の子らしい三郎を、生徒たちは遠巻きに眺める。その日、外では激しい風が吹いていた。嘉助たちは、三郎こそ風の神の子「又三郎」ではないかとささやき始める。 三郎は村の子どもたちと野原を走り、谷川で遊び... 続きをみる
長屋住まいの一人の男、名を熊五郎(くまごろう)という。元は大泥棒だが、今は「足を洗った」と言い張り、昼から酒をあおる日々。そんな熊五郎のもとへ、昔の盗人仲間が訪ねてくる。「いい家を見つけたんだが、お前の“嗅覚”を借りたい」と誘うのだ。 狙うは、大店(おおだな)で隠居した老夫... 続きをみる
最近、化粧について少し思うことがある。若い人の顔を見ていると、まつ毛をくっきり描く人と、ぼやっと自然に描く人がいる。昔はそんな違いなど気にも留めなかったが、年を取ると、まつ毛一本にもその人の考え方が出るように見えてくる。顔というものは、案外、正直な看板である。 くっきり描いたまつ毛は、最初のうちは... 続きをみる
江戸の町、火事と喧嘩は江戸の華。とりわけ火事には町人の血が騒ぐ。ある材木屋の若旦那・徳三郎は、その火事に取り憑かれたような男。火の手が上がれば、どこからともなく駆け出して行き、火消しのまねごとをする。店の者も親も手を焼くほどの“火事狂い”。折しも、そんな徳三郎に婿入りの話が... 続きをみる
長屋に住む与太郎(よたろう)が、ある日、しょんぼりと寝込んでしまった。 熱もなければ、咳も出ず、飯も喉を通らない。ただ天井を見つめてため息ばかりついている。 「どうしちまったんだい、風邪かね?」と心配する熊さんや八っつぁんに、与太郎はぽつりと答える。 「いや…なんだか胸がこう、きゅう... 続きをみる
むかしむかし、ある村に「さだ六」という心の優しい男が住んでいた。日々まじめに働いていたが、貧しく一人暮らし。そんな彼の唯一の友は、白い犬の「シロ」だった。シロは人懐っこく、いつもさだ六のそばにいて、畑仕事にもついてくる。村の人々も、二人を見てはほほえましく思っていた。 ある日、村で火事が起こる。さ... 続きをみる
ある山奥の村に、ずる賢くて怠け者の男が住んでいた。男は働かずに楽して暮らしたいと願い、毎日ゴロゴロしては文句ばかり言っていた。そんなある日、山の奥へキノコを採りに入った男は、偶然天狗たちの集会に出くわしてしまう。男は木の陰に隠れてその様子をこっそりと見ていた。天狗たちは、羽うちわで自在に風を起こし... 続きをみる
むかしむかし、足柄山のふもとに、たくましい赤い腹掛けをした男の子・金太郎が、お母さんと二人きりで暮らしておりました。父を早くに亡くし、母の手で育てられた金太郎は、山の動物たちと友だちになり、日々、相撲や綱引き、丸太割りなどで力くらべをして遊んでおりました。 ある日、大雨で大きな木が川に倒れ、橋が流... 続きをみる
22.三遊亭金馬(さんゆうてい・きんば)「3代目」 生年月日大正14年(1925 年)11月25日 没年月日令和4年(2022年)12月16日 享年:97歳 三遊亭金馬(さんゆうていきんば)(3代目)は、大正14年東京生まれの名人落語家。戦後の混乱期を経て昭和の高度経済成長期に、テレビ・ラジオの普... 続きをみる
ここは江戸の町角にある、なじみの床屋「浮世床」。町人たちが、髪を整えに来るというより、むしろおしゃべりに来るのが目当て。今日も店には長屋の連中が三々五々集まり、床几(しょうぎ)に腰かけては、世間話や与太話に花を咲かせている。季節は春、外はうららか、店の中にもぽかぽかと陽が差し込む。髷(まげ)を結い... 続きをみる
江戸の長屋に住む独り者の八五郎。腕は立つが口下手で、女っ気のない暮らしを続けていた。そんなある日、大家から「年頃の良い娘がいる。婿に来てくれぬか」と話が舞い込む。まさか自分に縁談が来ようとは夢にも思わず、最初は戸惑う八五郎だったが、話を聞けば器量も悪くないとのこと。「こりゃあ渡りに船だ」と話を進め... 続きをみる
江戸のある町、気立ての良い男・八五郎が、古くからの隣人であった老人の訃報を聞いた。 貧しいながらも人情深い老人で、町内では顔の知れた人物。八五郎は「そりゃあ、行かにゃあならねぇ」と、急いで悔やみに向かうことにした。 だが、着物は普段着のまま、足元も草履で泥まみれ。 それでも八五郎は、「死んじまった... 続きをみる
昔、ある村に心優しい馬子(うまご=馬を使う旅人)が住んでいた。 彼の連れていた馬は、年老いて足も弱り、荷を運ぶにも苦労するほどだったが、馬子はけっして手放さず、大切に世話していた。ある日、旅の途中で村人に笑われても、「この馬は家族のようなもの」と言って笑って答えた。 ある晩、峠道で日が暮れ、馬子は... 続きをみる
むかしむかし、山里に「ごんべえ」という働き者の若者がいました。ごんべえは貧しいながらも明るく、村人たちに好かれていました。ある日、ごんべえは「鴨をたくさん捕まえれば一攫千金」と考え、鴨捕りに出かけることにしました。竹で作った大きな籠を背負い、川辺へと向かいます。 ごんべえは川辺に餌をまいて、鴨たち... 続きをみる
19.三遊亭円窓(さんゆうていえんそう)「5代目」 生年月日昭和13年(1938年)10月10日 没年月日令和5年(2023年)10月13日 享年:86歳 五代目三遊亭円窓(さんゆうてい・えんそう)は、昭和を代表する名人落語家であり、また教育者・文筆家としても活躍した多才な人物です。三遊亭円楽(五... 続きをみる
ある日の夕暮れ、江戸の町にひとりの田舎者がやって来た。 浅草から上野を回り、物見遊山に心を躍らせながら、粋な町人たちの行き交う姿にいちいち感心していた。 「江戸はなんと華やかなことか」と、彼は目を丸くして歩き回る。 ふと目に入ったのは、店先で職人が器用に飴細工を作る光景。田舎者は感嘆の声をあげる。... 続きをみる
昔、ある村にとても貧しい夫婦が住んでいた。日々の暮らしもままならず、ある日、男は生きる望みをかけて都へと出ていくことにした。 途中、道端で一人の年老いた旅人に出会う。旅人は男に、「都で『かしき』というものを探してごらん」とだけ言い残し、姿を消す。男はその言葉を信じて、都で「かしきとは何か」を探し始... 続きをみる
ある夜のこと。村はずれの古びた家に、老夫婦が二人きりで暮らしていた。そこへ嵐が来て、雨がざあざあ降る晩。戸をたたく音に驚いて出てみると、そこには泥だらけの泥棒が。なんとこの古屋に忍び込もうというのだ。だが、家があまりにもぼろくて何も盗るものがないとわかると、泥棒は屋内に入り、火鉢のそばで老夫婦と一... 続きをみる
16.三遊亭円歌(さんゆうていえんか)「3代目」 生年月日昭和7年(1932年)1月10日 没年月日平成29年(2017年)4月23日 享年:85歳 三代目 三遊亭圓歌は、昭和7年(1932年)に東京・向島で生まれ、戦後の落語界を代表する名人の一人です。1945年に二代目三遊亭円歌に入門し、前座名... 続きをみる
吉原通いが日課だった若旦那・清三郎(きよさぶろう)は、馴染みの遊女・お久(おひさ)との関係に終止符を打たれてしまう。理由は、「他の大店に身請けされることが決まったから」とのこと。すっかり気落ちした清三郎は、それ以来、飯も喉を通らず、昼も夜も布団の中でうつぶせたまま。心配した番頭がご隠居に相談し、何... 続きをみる
品行方正を絵に描いたような若旦那・時次郎。年は二十そこそこ、髷も初々しく、母のいいつけを守ってお寺通いと学問三昧。遊びの「ゆ」の字も知らぬ堅物ぶり。町の者たちは「このままでは男が腐る」と心配し、馴染みの遊び人・源兵衛と田之助が一計を案じる。無垢な若旦那を花街に連れ出して、“男の世界&r... 続きをみる
元日の朝。長屋の八五郎(はちごろう)、新年の挨拶回りから戻るなり、女房にこう言った。 「こちとら、初夢が縁起もんだってんで、昨夜は枕の下に宝船の絵を忍ばせて寝たのさ」 女房が「そりゃめでたいねぇ」と笑うと、八五郎はふんぞり返って続けた。 「そしたらよ、夢ん中で、なんと富士のてっぺんに登って、茄子を... 続きをみる
昔々、ある村に身寄りのない老夫婦が住んでおりました。子どもに恵まれなかったふたりは、神さまに毎日お祈りをしていました。するとある晩、老夫婦のもとに夢のお告げがあり、「川のほとりに行けば、授かるものがある」と告げられます。翌朝、ふたりが川辺に行くと、大きな桃のような包みに包まれた赤子が流れてきました... 続きをみる
むかしむかし、ある山里に元気な男の子が住んでいました。風が強い日でも外を駆けまわるのが大好きで、風の音に耳をすませては、「風の神さま、もっと吹いてくれ!」と呼びかけていました。村の人々は「風の神さまは気まぐれじゃ。あまり挑発すると怒らせるぞ」と心配しましたが、男の子は笑って気にしませんでした。 あ... 続きをみる
昔、ある国に美しく優しい姫が生まれましたが、幼くして母親を亡くしてしまいます。母は死ぬ間際に、姫の身を守るために「誰にもこの鉢を外してはならぬ」と言い残して、姫の頭に鉢をすっぽりと被せました。それ以来、姫は「鉢かつぎ姫」と呼ばれるようになりました。 成長した姫は、鉢をかぶったままでも心の美しさがに... 続きをみる
八五郎は、酒に溺れては家に金も入れず、博打と喧嘩に明け暮れる日々。ついには堪忍袋の緒が切れた女房、おたかが三行半を突きつけ、幼い息子・亀吉を連れて実家へ帰ってしまう。「出てけ!」と言われたときの八っつぁんの負け惜しみと空元気、しかしその実、胸の奥ではポッカリと大きな穴が開いたような淋しさを感じてい... 続きをみる
むかし、美濃の国(現在の岐阜県)に、親思いの若者が住んでいた。父は病で寝たきりとなり、働けなくなっていたが、息子は文句も言わず、山で薪をとり、貧しいながらも二人で慎ましく暮らしていた。 ある日、息子はいつものように山へ入ると、森の奥から不思議な香りがただよってきた。不思議に思って近づくと、岩の間か... 続きをみる
昔、ちょうふく山のふもとの村に、あるおばあさんが住んでいました。ある日、町へ織った布を売りに行こうと山道を越えていると、山の途中で突然天気が悪くなり、雷雨に見舞われます。困ったおばあさんが雨宿りできる場所を探していると、奥深い林の中に一軒の古びた家を見つけます。そこで「もしや…&he... 続きをみる
昔、貧しいが心の優しいおじいさんと、おばあさんが山里に住んでいました。ある冬の日、おじいさんは山へ薪を取りに行きましたが、大雪で道に迷ってしまいます。寒さに震えていると、ふと目の前に古びた地蔵さまが現れました。おじいさんはその地蔵に「助けてください」と手を合わせ、しばらくそばに座って雪をしのぎまし... 続きをみる
むかし、ある村に年老いた夫婦がいた。ふたりは貧しいながらも仲睦まじく暮らしていたが、子どもがいないのが長年の悩みだった。ある日、婆さまが垢(あか)だらけの体を洗いながら、「この垢で子ができたらいいのに」とつぶやいた。すると、その垢から人の形をした赤ん坊が現れた。「おお、こりゃ力太郎じゃ!」と名づけ... 続きをみる
昔々、京の町の外れに、**牛若丸(うしわかまる)という美しい少年がいました。牛若丸は、亡き父の志を胸に、山深い鞍馬寺で修行の日々を送っていました。ある晩、山の杉林で剣の稽古に励んでいると、赤ら顔に長い鼻の大天狗(だいてんぐ)**が現れ、「お前に秘剣を授けよう」と告げます。こうして、牛若丸は空を飛ぶ... 続きをみる
江戸の長屋裏にある賭場では、博打打ちたちがひしめき合っていた。丁か半か、サイコロの音が夜の静けさに響く。そんな中、ある若者が現れ、最初の勝負で見事に「一目上がり(出目が一で勝ち)」を決める。「こりゃ縁起がいい」と周囲も盛り上がり、彼は次々と勝ちを重ねていく。 若者は日を重ねるごとに勝ち続け、「一目... 続きをみる
江戸の町にて、旅の噺好きが耳にしたのは、"嘘しか言わぬ村"があるとの話。その名も「うそつき村」。興味津々、男は早速そこへ向かうこととした。道中、旅籠の亭主や道端の百姓らも口を揃えて「あの村の連中は、嘘しかつかん」と言う。道を進むうち、男の胸は高鳴り、目の前に現れたのは、どこかの... 続きをみる
江戸の町は春の宵、町角に立つは長屋住まいの八五郎(はちごろう)。日がな一日を無為に過ごし、のんびり鼻をほじっていたところを、向こうからふらりと現れたのは、隣町で評判の物知りご隠居。 「おう八、何をしてる?」 「へい、ちょいと…鼻でもいじっておりました」 江戸の市井に生きる男の、なんと... 続きをみる
ある町の裏店に住む若い娘、およしは、毎朝欠かさず庭に咲く蕣(あさがお)を眺めるのを楽しみにしていた。短命なその花を愛おしみ、夜明けとともに起きては、咲いたばかりの花に声をかけ、水をやっては手を合わせていた。その姿は、近所の者の目にも「風流な娘」と映っていた。 ある日、裏長屋の表に住む職人・新八がふ... 続きをみる
昔々、ある村に、年老いた人々を捨てなければならぬという悲しい掟がありました。村では口減らしのため、六十を超えた親は山へ捨てられる運命でした。 ある日、素朴な心を持つ一人の青年が、病を抱える年老いた母を背負い、涙ながらに山道を登っていきました。母は道中、「ここを右に曲がると村に戻れる」とか「この木を... 続きをみる
むかしむかし、ある村に正直者の男が住んでいた。貧しくとも愚痴ひとつ言わず、毎日コツコツ働いて暮らしていた。ある晩、男の家に奇妙な客が現れる。それは「貧乏神」と名乗るやせ細った男だった。 「ここに居候させてくれ」と頼まれた男は、あっさりと了承し、「お前も腹が減っておるのか、まあ食っていけ」と笑って団... 続きをみる
昔々、ある老夫婦が「子どもがほしい」と毎日神に祈っていたところ、ついに願いが叶い、指ほどの小さな男の子が生まれた。「一寸法師(いっすんぼうし)」と名づけられたその子は、背は小さいが心は立派。成長してやがて、「都に行って侍になりたい」と願い、お椀の船に針の刀、箸の櫂を持ち、川を下って都を目指す。 や... 続きをみる
昔、貧しいけれど心のやさしい若者がいた。ある日、観音様にお参りしたところ、「最初に手にしたものを大切に持って歩け」とお告げを受ける。寺を出た彼の手に、たまたま一本の「わらしべ(藁のしべ)」があった。 歩く途中、赤子をあやすために藁のしべを欲しがった女に渡すと、お礼にミカンをもらう。そのミカンは、喉... 続きをみる
浦島太郎(うらしまたろう)は、心やさしい漁師の青年。ある日、村の浜辺で、子どもたちが一匹の小さな亀をいじめているのを見つけた。「かわいそうに」と浦島は子どもたちをたしなめ、亀を助けて海へ逃がしてやった。穏やかな波の向こうへ泳ぎ去る亀を、浦島は優しい目で見送った。 数日後、海で漁をしている浦島の前に... 続きをみる
町内に住む碁好きの隠居が、今日も暇を持て余しつつ、誰か相手が来ないかと待っていた。そこへ現れたのが、見慣れぬ若者。物腰柔らかで、碁も少々打てるというので、さっそく対局が始まる。だがこの若者、素人を装いながらも、じつはかなりの腕前。隠居はまったく歯が立たず、連戦連敗で悔しがる。 それでも勝てぬとなる... 続きをみる
夜も更け、長屋の一軒に泥棒が忍び込んだ。家主は目を覚ますが、寝たふりをして様子を窺う。部屋の隅でごそごそ音がする。「さて、何を盗ってゆくやら」と心で思いながら、家主はそっと耳を澄ませる。 ところが、盗人は戸棚や箪笥を探っても、何も見つからぬ様子。ため息まじりに「こりゃ貧乏長屋もいいとこだ」とぼやく... 続きをみる
昔むかし、ある山里に「天福(てんぷく)」という名の、やさしく気立てのよい男が住んでおった。天福は貧しいながらも正直者で、山の薪を拾っては町で売り、母とふたりでつましく暮らしていた。ある日、山道で迷った旅の僧に出会い、持っていた団子を差し出し、道案内までしてやった。僧は深く感謝し、「よいことがあるじ... 続きをみる
むかしむかし、ある山里に心優しいおじいさんとおばあさんが住んでいました。 ある日、おじいさんは畑を荒らすタヌキを捕まえます。「悪さばかりするんじゃない」と注意し、家へ持ち帰ります。 おじいさんはタヌキを縄で縛り、「後で山へ返してやろう」と言い残して山仕事へ向かいます。 ところがタヌキは油断したおば... 続きをみる
4.桂三木助(かつらみきすけ)「3代目」 生年月日:大正12年(1923年)7月9日 没年月日:昭和58年(1983年)1月14日 享年:59歳 三代目桂三木助(かつら みきすけ)は、東京出身の名人落語家で、江戸落語の正統を継ぐ実力派。初代三木助の孫弟子で、五代目古今亭志ん生に入門、のちに三代目三... 続きをみる
長屋の若い男が、兄貴分の忠告を受けるところから始まる。「これからは人とのつきあいを大事にせにゃならねぇ。その第一歩が“ほめる”ってぇもんさ」――と、兄貴は語る。ちょうど近所のご隠居が飼ってる立派な牛を見て、「あの牛をうまくほめて、話しかけてみな」と指南する。若者はうなずき、... 続きをみる
ある日、長屋の男・茂兵衛が、懐から見事な革の煙草入れを取り出した。細工も見事、金具も上等。隣人の徳さんが「おい茂さん、それは粋な一品だねえ」と感心する。茂兵衛、鼻を高くして「ええ、吉原帰りにふと見つけてね、つい衝動買いで」と得意気に語る。 ところがそれを見た熊五郎が、「へぇ、いいもん持ってるじゃね... 続きをみる
むかしむかし、ある冬の日。あたり一面は雪に覆われ、冷たい風が吹きつける季節のこと。お腹を空かせたキツネが、とぼとぼと雪道を歩いていると、向こうからやってきたサルに声をかけられます。 「おい、キツネや。魚が食いたいなら、いい方法があるぞ」 サルはニヤニヤ笑いながら、川の氷に穴をあけて、しっぽを入れて... 続きをみる
江戸の町はずれ、貧しいが気のいい八人の男たちが長屋に暮らしていた。ある日、その中の一人が「法華経(ほけきょう)」の信仰を始め、講(こう)という集まりに通い出す。講では信仰のありがたさを説く一方、参加者には白飯と煮しめが振る舞われるという話に、長屋中の者たちが目を輝かせた。「飯にありつけるなら、拝ん... 続きをみる
ある冬の夜更け、江戸の町。男が屋台の蕎麦屋に近づき、「そば、ひとつくんな」と声をかける。寒さもあってか、屋台の湯気がありがたく感じられる。蕎麦屋は「へい、いらっしゃい」と応じ、男にそばを出す。男は器用にすすりながら、実にうまそうに食べる。周囲の人間も思わず見とれるほどの食べっぷりだ。 そばを食べ終... 続きをみる
旦那衆の中でも、義太夫好きで知られる呉服屋の旦那。ある日、番頭や手代たちを座敷に呼びつけ、「今晩は義太夫を一席聴かせる」と高らかに宣言する。商売の話かと思いきや、義太夫の披露。だが、使用人たちは気が重い。なにせ旦那の義太夫は、音程は外れ、節回しも乱れ、耳にするのが苦痛なほど。「またあの『寝床』か&... 続きをみる
昔々、雪深い山里に、心優しいおじいさんとおばあさんが暮らしていました。ふたりはとても貧しく、年の瀬が迫っても正月の準備もままなりません。 ある朝、おじいさんは「少しでも銭に替えられれば」と、家にあった手作りの笠を六つ持って町へ売りに出かけます。 町では誰も笠を買ってくれず、おじいさんはがっかりして... 続きをみる
江戸の裏長屋に住む与太郎は、着物の裾を引きずり、歩くたびに泥をはねる粗忽者。ある日、ご隠居が「与太、もう少し尻を端折って、しゃんと歩きな」と注意した。ところが与太郎は首をかしげ、「尻を端折るとは、尻を短くすることですかい」と尋ねる。ご隠居は笑いながら、着物の後ろ裾を帯へ挟む仕草を教えた。 ご隠居は... 続きをみる
美しく輝く「貝の火」の評判は森じゅうに広まり、ついにずる賢い狐の耳にも届いた。狐はホモイの家を訪ね、宝を大げさに褒めたたえ、「あなたほど立派な方にこそふさわしい」と巧みにおだてた。父の戒めを忘れかけていたホモイは、狐の言葉に気をよくし、自分が森で最も偉くなったように感じ始める。 狐はホモイを森へ連... 続きをみる
平安の昔、都の羅生門に鬼が現れるという噂が広まった。夜な夜な門に近づいた人々が忽然と姿を消すという。人々は恐れ、誰も近づかなくなった。ある日、都一番の弓の名手・渡辺綱(わたなべのつな)が、「このままでは武士の名折れ」と、鬼退治を志願する。 夜、綱は羅生門に潜む。すると突如、空が鳴り、黒雲とともに巨... 続きをみる
むかしむかし、山あいの村に年老いた一人暮らしの老婆がいました。子も孫もなく、糸をつむいでは布を織り、かろうじて暮らしていました。ある雪の夜、老婆が囲炉裏のそばで糸車を回していると、戸を叩く音がしました。開けてみると、小さな痩せた子狸が震えて立っていました。老婆は「かわいそうに」と子狸を抱え、暖めて... 続きをみる
大工の熊五郎、腕は立つが気性が荒く、喧嘩っぱやいことで近所でも知られた存在。ある日、仕事帰りに財布を拾った。中には三両。真っ当に届けようと、名乗り出を待つことにしたが、なかなか現れぬ。やがて、持ち主の左官・八五郎が名乗りを上げた。熊五郎は「拾い主に届け出るとは殊勝な心がけ」と言って財布を返そうとす... 続きをみる