14.『日本おとぎ噺 』「三年寝太郎」
むかしむかし、とある村に働かずに三年もの間、寝続けている若者がいた。「寝太郎(ねたろう)」と呼ばれるその男は、毎日ひたすら布団の中でゴロゴロしているだけ。村人たちは「あれじゃ、何の役にも立たん」と呆れ果てていた。働き者の親も心配したが、寝太郎はただニコニコ笑って眠り続けるばかりで、起きる気配すらないのだった。

「三年が経ったある日、寝太郎はふいにむくりと起き上がり、「さて、そろそろ働くかのう」とつぶやいた。村人たちは驚き、呆気にとられた。寝太郎はすぐさま村の浜へ向かい、大勢の若者たちに声をかけると、太い綱や丸太、木橇(きぞり)を集めさせた。そして自ら先頭に立ち、山へと向かっていく。誰もが「何をする気だ」と訝しんだが、寝太郎はまっすぐ山の中腹にある大岩の前へたどり着くと、「よっこらせ」と声を張り上げ、巨大な岩を動かし始めた。」

寝太郎が動かした岩の下からは、こんこんと清らかな水が湧き出し、小川となって山を下っていった。実は、この岩が水の流れを塞いでいたのだ。この水は村まで流れつき、長らく干ばつに苦しんでいた村に潤いをもたらした。田畑は蘇り、稲もよく育ち、村人たちは大いに喜んだ。「あの寝太郎が、村を救ったとは…」と、人々の見る目が一変した。

その後、寝太郎は元の布団に戻ることなく、村の発展に尽力したという。人々は彼を「大寝太郎様」と呼び、感謝しながら敬意をもって接した。寝太郎の三年の眠りには、きっと大きな意味があったのだろう。――やがてこの村は豊かな水と田畑に恵まれ、繁栄していったそうな。

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