語り継ぐこころ/日本おとぎ噺・江戸小咄・古典落語・笑いの匠たち

日本おとぎ噺・江戸小咄、古典落語・笑いの匠たちのダイジェスト版と挿絵です。たまに、私の与太話が入ります。 文も挿絵もChatGPTが作っています。   よかったら ★nice! をポチット押してね。

70.日本おとぎ噺 「ふとんの噺(ふとんのはなし)」

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むかし、ある村に働き者の若者がいた。貧しい暮らしをしながらも、毎日畑に出ては一生懸命に働いていた。寒い夜でも、古びたボロ布を体に巻いて寝るのが当たり前で、ふとんなど夢のまた夢であった。だがある晩、冷たい夜風に震えながら、「ああ、ふかふかのふとんで眠れたらなあ」と、ふとつぶやいた。



その夜、若者は不思議な夢を見る。夢の中で、ふわふわの大きなふとんが空から舞い降りてきて、「おまえの心根のよさに応えてやろう」と語りかける。そして、翌朝目を覚ますと、なんと本当に見たこともないような立派なふとんが床の上に置かれていた。あまりに信じられず、若者はしばらく見つめていたが、ありがたくそれにくるまってみた。



それからというもの、若者はふとんに入るのが何よりの楽しみになった。ところが、ある日ふとんが突然「わしはもう行かねばならん」と告げる。若者は泣いてすがるが、ふとんは「心根の清い者に出会うたび、わしは旅を続けるのだ」と言い残し、ふわりと宙に浮いて消えていった。



それからまた元の貧しい暮らしに戻った若者だったが、心は不思議と満たされていた。「あのぬくもりを知っただけで、もう十分だ」と、彼はまた畑へ出かけていった。村の人々も、彼の穏やかな顔つきに気づき、次第に手を差し伸べるようになっていったという。


『宮沢賢治・光と風の物語』 第十三回「グスコーブドリの伝記」第1話 森で暮らすブドリ一家/全6話

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イーハトーブの山あいの森で、少年グスコーブドリは父、母、妹ネリと静かに暮らしていた。家のまわりには木々が茂り、畑では家族が力を合わせて働く。貧しくても、自然とともに生きる日々には、素朴な安心とぬくもりがあった。



ブドリは父に仕事を教わり、母やネリとともに慎ましく毎日を送った。鳥の声、風の匂い、畑の実りは一家の暮らしを支える大切な恵みだった。ブドリはまだ幼いながらも、家族と働き、支え合うことの意味を自然の中で少しずつ覚えていく。



ところがある年、冷たい風が早くから吹き、夏になっても気候はなかなか暖かくならなかった。畑の作物は思うように育たず、森や村の人々の顔にも不安が広がっていく。昨日まで当たり前だった平和な暮らしに、少しずつ暗い影が差し始めた。



やがて寒さはいっそう厳しくなり、実りの乏しさは一家の暮らしを大きく揺さぶり始める。ブドリは、自然の恵みだけに頼って生きることの厳しさを、まだはっきりとは分からないまま感じ取っていた。穏やかだった森の家には、これから訪れる苦難の気配が静かに迫っていた。


30.『古典落語』「夢の酒(ゆめのさけ)」

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江戸のとある長屋に住む男がいた。酒好きで知られ、朝から晩まで飲んでは寝て、寝ては飲む暮らし。ところが、ある日を境にぴたりと酒を断ち、何やら神妙な面持ちで暮らすようになる。隣人や大家も驚き、「どうしたんだい、急に人が変わったように」と問いただすと、男はぽつりと語る。

「実はな、妙な夢を見たんだ。夢の中で、見たこともない立派な屋敷に通されて、美しい女中たちが次々と酒をついでくれてな……。そりゃあもう、極楽のような心地だった」

だが夢の中の酒は、あまりに美味すぎて、目が覚めたときに現実の酒が色褪せて感じてしまったという。それ以来、酒を口にする気が起きないのだと。



男の話に、長屋の連中は呆れたり、感心したり。「夢に酔ったとは粋な話だ」と噂になる。だが日が経つにつれ、男の様子がおかしくなる。日がな一日、ぼんやりと縁側で空を見上げ、「また、あの夢が見たい……」とつぶやくばかり。食も細くなり、やせ細っていく。

心配した大家が、「せめて医者にでも診てもらったらどうだ」と言えば、「医者にかかって夢が見られるものかい」と笑い飛ばす。だがその目には、どこか狂気じみた光が宿っていた。

しまいには、「今夜こそ、あの夢を……」と言い残し、布団に入ったまま目を覚まさなくなる。ああ、これは夢に魂を取られたのだ、と長屋中がざわつく。



ところが、翌朝ふらりと男が起き上がってくるではないか。しかも顔には満面の笑み。「とうとう、あの夢の続きを見たんだよ」と語る。

「また屋敷に通されてな。女中たちが『お待ちしておりました』って。今夜は特別な酒がございます、ってな……」

皆が「よかったなあ、夢が戻ってきて」と祝福する中、男は急に真顔になって言う。「でもな、夢の中で一つだけ困ったことがあったんだ」

「なんだい?」

「勘定を渡されたんだよ。しかも、えらく高くてな……。夢の中だからって、タダ酒じゃなかったらしい」



夢の中での勘定を払えず困っていたところ、女中たちが口々に「では、現実に戻って稼いでからまたいらしてください」と言ったという。それを聞いて目が覚めた男は、ふっと笑いながら立ち上がる。

「というわけで、これから真面目に働くよ。夢の酒をまた呑むためにな」

こうして、夢に導かれ、現実を変えた男の噺は、長屋で語り草となった。江戸の粋とユーモアが染みる、まさに“夢のような”一席である。


69.日本おとぎ噺 「幽霊のさかもり(ゆうれいのさかもり)」

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昔、とある城下町に、誰も近づかない古い屋敷があった。夜になると、そこから三味線の音や笑い声が聞こえるというのだ。噂では「幽霊たちが酒盛りしている」とも言われ、人々は怖れていた。ある日、町にやってきた浪人風の侍が「幽霊など信じぬ」と豪語し、一晩その屋敷に泊まると言い出す。



夜更け、屋敷の中は静まり返っていたが、次第に三味線の音が鳴り始め、提灯の明かりがぼんやり灯ると、あちらこちらから着物姿の男女が現れる。彼らは何事もないように、侍に盃を勧め、賑やかに酒盛りを始めた。侍も最初は警戒していたが、次第にその雰囲気に呑まれて盃を受け取り、共に酒を飲み始める。



酔いが回る中、侍がふと盃を見ると、酒が赤黒く濁っている。驚いて辺りを見渡すと、肴は骨、座敷は墓地、客は骸骨たちに変わっていた。ぞっとして侍が立ち上がると、幽霊たちは不気味に笑いながら追いすがってくる。侍は刀も忘れて必死で屋敷を飛び出した。



翌朝、侍は町人たちに助けられ、ようやく正気を取り戻す。屋敷はもとの廃墟で、宴の跡など何も残っていなかった。侍は震える声で「二度とあの屋敷には近づかぬ」と語り、それから町を後にしたという。幽霊の酒盛りは、今も月夜に続いているのかもしれない…。


『宮沢賢治・光と風の物語』第十二回「カイロ団長」

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三十匹のあまがえるは、虫たちに頼まれ、草の実や美しい石、苔を集めて、小さな花畑や庭を造っていた。朝の金色の光から夕暮れまで、風の中で歌い、声を掛け合って働く毎日は、忙しくても楽しいものだった。ある日、仕事帰りの一行は、桃の木の下に新しく開いた酒屋を見つける。



酒屋のとのさまがえるは、珍しい外国の酒を勧めた。あまがえるたちは夢中になって何杯も飲み、代金を払えなくなる。とのさまがえるは、借金の代わりに全員を家来とし、自らを「カイロ団長」と名乗った。翌日から団長は、千本の木や一万粒の実を集めろと命じ、できなければ警察へ渡すと脅した。



団長は今度、一匹につき九百貫もの石を運べと命じた。疲れ果てたあまがえるたちが倒れかけた時、青空から、かたつむりのメガホンが響く。「命令する者は、相手との体重差を計算し、その仕事を自分で二日間試せ」。計算すると、団長自身が四千五百貫の石を運ばなければならなくなった。



石を動かせず倒れた団長を、あまがえるたちは思わず笑った。しかし再び王様の声が響く。「すべての生き物は気のよい、かわいそうなものである。決して憎んではならない」。あまがえるたちは団長を助け、団長も涙を流して謝った。翌日から彼は仕立屋となり、皆は光と風の中で、元の楽しい庭造りへ戻った。