70.日本おとぎ噺 「ふとんの噺(ふとんのはなし)」
むかし、ある村に働き者の若者がいた。貧しい暮らしをしながらも、毎日畑に出ては一生懸命に働いていた。寒い夜でも、古びたボロ布を体に巻いて寝るのが当たり前で、ふとんなど夢のまた夢であった。だがある晩、冷たい夜風に震えながら、「ああ、ふかふかのふとんで眠れたらなあ」と、ふとつぶやいた。

その夜、若者は不思議な夢を見る。夢の中で、ふわふわの大きなふとんが空から舞い降りてきて、「おまえの心根のよさに応えてやろう」と語りかける。そして、翌朝目を覚ますと、なんと本当に見たこともないような立派なふとんが床の上に置かれていた。あまりに信じられず、若者はしばらく見つめていたが、ありがたくそれにくるまってみた。

それからというもの、若者はふとんに入るのが何よりの楽しみになった。ところが、ある日ふとんが突然「わしはもう行かねばならん」と告げる。若者は泣いてすがるが、ふとんは「心根の清い者に出会うたび、わしは旅を続けるのだ」と言い残し、ふわりと宙に浮いて消えていった。

それからまた元の貧しい暮らしに戻った若者だったが、心は不思議と満たされていた。「あのぬくもりを知っただけで、もう十分だ」と、彼はまた畑へ出かけていった。村の人々も、彼の穏やかな顔つきに気づき、次第に手を差し伸べるようになっていったという。

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