語り継ぐこころ/日本おとぎ噺・江戸小咄・古典落語・笑いの匠たち

日本おとぎ噺・江戸小咄、古典落語・笑いの匠たちのダイジェスト版と挿絵です。たまに、私の与太話が入ります。 文も挿絵もChatGPTが作っています。   よかったら ★nice! をポチット押してね。

『宮沢賢治・光と風の物語』第十一回「月夜のでんしんばしら」

100えんメガネ

ある晩、少年の恭一は、ぞうりを履いて鉄道線路のそばを歩いていた。空には九日の月が浮かび、月光を含んだうろこ雲の間から、冷たい星が光っている。遠くの停車場には赤や紫の明かりがともり、夜の中に大きな城が立っているように見えた。静かな風と電線のうなりに包まれながら、恭一は不思議な夜道を進んでいった。



突然、線路沿いに並んでいた電信柱が、片脚を上げて北へ歩き始めた。柱たちは瀬戸物の飾りを肩につけ、亜鉛の帽子と針金の槍を身につけた兵隊のような姿である。「ドッテテドッテテ」と軍歌を歌い、工兵隊や竜騎兵を名乗りながら、次々と恭一の前を通り過ぎた。疲れて倒れそうな柱まで、仲間に励まされて歩き続けていた。



行進する柱のそばから、黄色い顔をした小柄な老人が現れ、「お一二」と号令をかけた。老人は恭一に、自分はすべての電気を率いる「電気総長」だと名乗り、握手を求める。手を握った途端、青い火花が散り、恭一の体に電気が走った。老人は得意そうに電気や電報の話を語り、規律正しく進む電信柱の軍隊を自慢した。



遠くに汽車の赤い明かりが見えると、電気総長は慌てて全軍に停止を命じた。電信柱は一瞬で元の位置へ戻り、軍歌もいつもの電線のうなりへ変わる。暗い客車を見た総長は列車の下へ潜り込み、やがて窓が一斉に明るくなった。子どもの喜ぶ声を残して汽車は走り去り、月は雲へ隠れた。線路には再び静かな夜が戻った。