「私の与太話」「眠れない」
古い家というものは、昼は黙っているくせに、夜になると急に働き出す。布団に入ると「ミシ」「カタン」。柱か床か分からない。「泥棒か? いや幽霊か?」と耳を澄ませるほど目が冴える。時計を見ると、まだ午前一時。どうやら今夜は、家の方が私より元気らしい。

やっと家が静かになったと思えば、今度は堤防道路の車である。遠くからゴーッと近づき、また遠ざかる。その繰り返し。午前二時ごろには突然「ドーン!」。家庭用の打ち上げ花火が数発上がった。「雨続きで余った花火を、こんな時間に処分か?」夜空まで私を寝かせる気がない。

午前三時。今度は新聞配達のバイクが一軒ごとに「ブーン、ブーン」。四時になると遠くからサイレン。「救急車か、消防車か」と考えているうちに、五時。早出の人たちの話し声、車のドア、エンジン音。町は順番に目を覚ましてゆく。眠っていない私だけが、一足先に全部聞いている。

そして午前六時。鳥まで鳴き始め、外はすっかり朝になった。不思議なことに、夜中あれほど気になった家の軋みも、車も、バイクも、話し声も、もう気にならない。私は布団をかぶり、「さあ、これでやっと眠れるぞ」と目を閉じた。――ところが妻の一声。「朝ですよ、起きる時間ですよ」。眠れたのは、夢の中だけだった。

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