130.日本おとぎ噺 「磐司と桐の花(ばんじときりのはな)」
奥州の山深くに、怪力で知られる若者・磐司が住んでいた。彼は誰よりも力が強く、村人からも一目置かれていたが、心根は優しく、弱きを助ける性分であった。ある年、都の殿様が「力自慢を集め、誰が一番かを競わせる」と布告を出した。村人たちは「磐司なら必ず勝てる」と背を押し、磐司は試しに挑むことを決意する。

都に出た磐司は、多くの強者と力比べをすることになった。綱引きでは十人がかりの武士を相手に一歩も引かず、丸太担ぎでは誰よりも軽々と持ち上げた。その力は殿様も驚くほどで、ついに磐司は「天下一の力持ち」と称えられた。だが褒美を受け取らず、「この力は生まれつきのもの、村に戻って役立てたい」と頭を下げた。

やがて村に戻った磐司は、農作業や橋づくりなど、村人を助けて暮らしていた。ある年の春、山中で見事に咲く桐の花を見上げ、「この花は大切にしよう」と心に決める。桐は高貴な木とされ、殿様への献上にも用いられる。磐司はその花を折らず、誰にも傷つけさせぬよう守り続けた。桐の花は村人たちにとっても、繁栄と平和の象徴となっていった。

時を経ても村人は「磐司のおかげで桐の花が守られ、村が栄えた」と語り継いだ。力で人を威圧することなく、花を守り人々を助ける姿こそ、真の強さであった。桐の花は今も春になると咲き誇り、磐司の優しい心と力を思い出させてくれるという。

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