語り継ぐこころ/日本おとぎ噺・江戸小咄・古典落語・笑いの匠たち

日本おとぎ噺・江戸小咄、古典落語・笑いの匠たちのダイジェスト版と挿絵です。たまに、私の与太話が入ります。 文も挿絵もChatGPTが作っています。   よかったら ★nice! をポチット押してね。

75.日本おとぎ噺 「船幽霊(ふなゆうれい)」

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ある漁村の沖では、夜な夜な「船幽霊」と呼ばれる化け物が出ると噂されていた。満月の晩、村の若い漁師・藤吉(とうきち)は、ひとり沖に舟を出した。海は静かで波も穏やかだったが、ふと背後に気配を感じる。振り返ると、舟のへりに白装束の女が立ち、こちらをじっと見つめていた。女は濡れた髪を垂らし、手には柄杓(ひしゃく)を持っていた。



女は無言で舟に乗り込み、柄杓で舟の中に海水を次々と汲み入れ始めた。藤吉は驚き、「やめろ!」と叫ぶが、女はひたすら水を入れ続ける。やがて舟は重くなり、沈みかける。「このままでは沈んでしまう!」藤吉はあわてて、老人から聞いた言い伝えを思い出す――「幽霊に柄杓を渡されたら、底を抜け」と。



藤吉はとっさに懐から小刀を取り出し、女の柄杓の底に穴を開けた。すると、汲んだ水がすぐに抜けるようになり、女は困った様子で水を汲み続ける。何度汲んでも水がたまらないことに気づくと、女の姿は次第に霞のように消えていった。舟の中は再び静まり返り、藤吉はがくりと膝をついた。



村へ戻った藤吉は、村人たちに事の次第を話した。年寄りたちは「やはり言い伝えどおりだった」と頷いた。それ以来、村人たちは舟に必ず底の抜けた柄杓を積むようになった。船幽霊はもう現れなくなり、藤吉の機転は「海の知恵」として長く語り継がれたという。


『宮沢賢治・光と風の物語』 第十三回「グスコーブドリの伝記」第6話 最後の決断と自己犠牲/全6話

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ある年、イーハトーブはこれまでにない厳しい寒さに襲われた。このままでは作物が実らず、大勢の人々が飢える恐れがあった。火山局では、海上の火山島を大きく活動させ、噴き出すガスによって気候を暖める計画が検討された。しかし、最後の作業を行う者は、島から戻れない可能性が高かった。



危険な役目を誰が引き受けるか決まらず、技師たちは重い沈黙に包まれた。そのときブドリは、自分に行かせてほしいと静かに申し出た。幼いころ、寒さと飢えによって家族を失った経験を持つ彼は、同じ悲しみを多くの人に味わわせたくなかった。ペンネン技師は思いとどまらせようとしたが、ブドリの決意は変わらなかった。



ブドリは火山島へ渡り、観測器を確かめながら最後の準備を進めた。遠くに広がる町や農地を思い浮かべ、これまで出会った人々や、失った家族のことを静かに振り返る。そして火山局へ作業の準備が整ったことを伝えた。間もなく火山は大きく活動し始め、空には厚い噴煙が立ち上った。



火山の働きによって大気の流れは変わり、イーハトーブには少しずつ暖かさが戻った。農作物は冷害を免れ、多くの人々の命と暮らしが守られた。ブドリは帰らなかったが、彼が学び、働き続けた生涯は、人々を救う大きな力となった。森で苦しんだ少年は、最後まで他者の幸福を願う立派な技師として生き抜いたのである。


32.『古典落語』「長命(ちょうめい)」

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江戸の町に住む年老いた男、町内でも評判の長寿者。顔には深い皺、髪は真っ白だが背筋はしゃんとしており、町の人々からは「ご隠居」と呼ばれて親しまれている。ある日、若い男が興味本位で声をかけた。「ご隠居さま、どうしたらそんなに長生きできるんで?」と。するとご隠居、頷きながらこう語り出す。「それはな、あるものを食べておるからじゃ」。



若者は食いつくように聞く。「それは何です?」「ま、特別なもんじゃない。毎朝、塩をひとつまみ、白湯に溶いて飲んでおる」。若者は目を丸くし、「たったそれだけで?」。ご隠居はさらに、「日々を淡々と、欲張らず、笑いを忘れず、身体を冷やさんようにしとるだけじゃ」。町の人々もその話に耳を傾け、「なるほど、長生きには秘訣があるもんじゃ」と感心しきり。



そこへ別の町人が横から口を挟む。「でもご隠居、あっしの隣の爺さんも塩湯を毎朝飲んどるが、先月ぽっくり逝っちまいましたぜ」。一同ざわつき、ご隠居も苦笑しながら、「そりゃ、あんた、飲み方が悪かったんじゃな」と受け流す。すると別の者がまた言う。「わしも塩湯始めたが、腹壊したぞ」。みな次第に話が怪しく思えてきて、「ほんとにそれで長命かいな」と疑いの目を向け始める。



ついにご隠居、観念してこう言う。「まあな、ほんとは長生きの秘訣なんぞ、ないんじゃ。たまたま、こうして生き残っとるだけじゃよ。あとは運と、なにより“人に好かれること”じゃな」。町の連中は「なるほど、それが一番難しい」と頷き笑い、ご隠居の話に感心した様子。江戸の空気にふわりと漂う、老いとユーモア。噺の終わりには、ご隠居が「さて、今夜も湯豆腐と熱燗じゃな」と言い残し、去ってゆく。長生きとは、案外そんなもんかもしれない。


74.日本おとぎ噺 「地獄のあばれもの(じごくのあばれもの)」

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昔、ある村に「市蔵(いちぞう)」という男がいた。乱暴者で人を殴る蹴る、盗みも平気、誰にも迷惑をかけてばかり。やがて市蔵は大酒の末に命を落としたが、善行一つない彼の魂は、真っ逆さまに地獄へ落ちてしまった。



市蔵は、地獄の門をくぐるとすぐに、閻魔大王の前に引き出された。だが反省の色はなく、「うるせぇジジイ!」と啖呵を切り、大王のひげを引っ張る始末。地獄の鬼たちも、最初は地獄の責めを課すが、市蔵の暴れぶりに手を焼く。針の山は一気に駆け上がり、血の池でも泳ぎまわる。「痛くもかゆくもねぇ!」と高笑い。ついには鬼たちが集まって、閻魔大王に「こやつだけは手に負えませぬ」と頭を下げる始末。



あまりの暴れぶりに、ついに閻魔大王が「こんなやつ、地獄でも困るわい!」と匙を投げ、市蔵は地獄から追い出されてしまう。行き場のない市蔵は天国に迷い込む。そこでは極楽浄土の仏たちが静かに過ごしていたが、市蔵はそこでも仏像を蹴り倒し、天女に茶をぶっかける。「おとなしくなんてしてられるか!」と喚き散らし、今度は天界が大騒ぎになる。



とうとう地獄も天国もお手上げとなり、「あいつはもう一度、人間に戻してやれ」という決定が下る。市蔵の魂は、山奥の寺の境内にふと蘇り、何事もなかったかのように目を覚ました。自分が死んで地獄・天国を巡ったことを夢のように思いつつも、以後の市蔵は一変。村のために汗を流し、困った人には手を差し伸べるようになった。「悪さをすれば、行くとこがなくなる」。それが彼の口癖になったという。


『宮沢賢治・光と風の物語』 第十三回「グスコーブドリの伝記」第5話 火山局での活躍/全6話

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クーボー大博士の紹介で火山局を訪れたブドリは、局長のペンネン老技師に迎えられた。火山局では、各地の火山を観測し、噴火や地震から町や農地を守る仕事をしていた。ブドリは学校で学んだ知識を役立てたいと願い、観測機械の扱いや地質の調査方法を熱心に覚え始めた。


ブドリは技師たちと飛行船に乗り、火山の上空や山腹を調査した。高温の噴煙や激しく揺れる大地を恐れながらも、観測器を確認し、岩石やガスの状態を記録していく。火山の動きを正しく理解すれば、多くの人を災害から救えると知り、ブドリは困難な仕事にも進んで取り組んだ。



ある年、寒さのために農作物が育たない恐れが高まった。火山局では、火山を人工的に噴火させ、噴き出したガスで大気の流れを変える計画が立てられた。ブドリたちは危険を承知で火山へ向かい、綿密な計算と観測を重ねて作業を実行した。計画は成功し、気候は少しずつ暖かくなった。



火山局での働きを通じ、ブドリは自分の知識が人々の命や暮らしを守る力になることを実感した。森を追われ、工場や農場を渡り歩いた苦労も、今の仕事につながっていたのである。ブドリはペンネン技師たちから信頼される立派な技師となり、各地の火山と農作物を守るため働き続けた。