語り継ぐこころ/日本おとぎ噺・江戸小咄・古典落語・笑いの匠たち

日本おとぎ噺・江戸小咄、古典落語・笑いの匠たちのダイジェスト版と挿絵です。たまに、私の与太話が入ります。 文も挿絵もChatGPTが作っています。   よかったら ★nice! をポチット押してね。

80.日本おとぎ噺 「赤ん坊になったお婆さん(あかんぼうになったおばあさん)」

100えんメガネ

むかし、ある山里に、心のやさしい若夫婦と年老いたお婆さんが三人で仲良く暮らしていました。年をとったお婆さんは、足腰が弱くなり、家のこともできなくなってきましたが、夫婦は「長生きしてくれるだけでありがたい」と笑顔で世話をしていました。



ある日、お婆さんは急に体が軽くなり、顔つきも若返っていくような不思議な感覚を覚えます。夫婦が驚いて見守るうちに、日に日にお婆さんは若返り、やがて子どものようになり、ついには赤ん坊の姿になってしまいました。声も泣き声に変わり、まるで生まれたてのようです。



夫婦は戸惑いながらも赤ん坊となったお婆さんを大切に育てる決意をします。夫は畑仕事の合間にあやし、妻はおんぶして野良仕事へ。村人たちは最初こそ不思議がりましたが、やがて皆が笑顔で見守るようになりました。赤ん坊のお婆さんも、どこか穏やかな笑みを浮かべて育っていきました。



やがて赤ん坊のお婆さんは、ある朝、静かに息を引き取りました。夫婦は涙しながらも、「もう一度この世に生まれ、私たちに愛を教えてくれた」と感謝し、丁寧に弔いました。その後も夫婦は仲良く暮らし、村では「お婆さんは天に戻ったのだ」と語り継がれました。


『宮沢賢治・光と風の物語』 第十五回「水仙月の四日」第1話 雪の日に町へ向かう子ども/全4話

100えんメガネ

水仙月の四日、山里は朝から冷えこみ、空も雪を含んだように白く沈んでいた。子どもは家の用を言いつかり、町へ続く雪道を一人で歩き出す。遠くの山は青くかすみ、静かな景色の中に、冬のきびしさがひそんでいた。



道の両側には雪をかぶった木々や畑が広がり、足音だけがかすかに響く。子どもは寒さに肩をすぼめながらも、用事を果たそうと懸命に進む。けれど空の色は少しずつ暗くなり、山の上には、ただならぬ冬の気配が集まり始めていた。



そのころ山の高みでは、雪の精たちが目を覚まし、吹雪のしたくを始めていた。子どもはそんなことも知らず、町での用事を済ませて帰り道を急ぐ。風はしだいに強まり、細かな雪が舞いはじめ、帰り道の空気は急に険しく変わっていく。



やがて雪は本降りの気配を見せ、子どもは胸に不安を覚えながらも、家へ帰ろうと足を早める。白い山野はますます静まり返り、その静けさの裏で、吹雪はすぐそこまで近づいていた。こうして、子どもと雪の世界の不思議な出来事が始まる。


34.『古典落語』「狸賽(たぬさい)」

100えんメガネ

長屋に住む一人の博打打ちの男。つきも運も尽き果て、賽(さい)を振っては外れ目ばかり。暮らしは傾き、財布はすっからかん。ある日、神社の境内で腰を下ろしていたところ、どこからともなく現れた白髪の老人が声をかけてくる。「あんた、よほど運がないようじゃな」。そう言うや、老人は懐から不思議な賽を取り出す。それは触れると温かく、まるで生き物のような感触だった。「これで振れば、当たり目しか出ん。だが、礼は後で払ってもらうよ」と笑う。男は半信半疑ながらも、その賽を受け取る。



その夜、男は試しに賽を振ってみる。すると、出るわ出るわの“目利き”。あっという間に賭場で連戦連勝。噂は江戸中に広まり、男の周りには金と人が集まり出す。賭場では誰もが彼の振る賽に魅せられ、勝ちを重ねる様に舌を巻く。男もついに“時の人”となり、遊びも酒も贅沢三昧。だが、浮かれ騒ぐその背後で、あの老人の不気味な笑顔が、ふと脳裏をよぎることもあった。



そしてついに、大勝負の日。賭場には大金がうずたかく積まれ、野次馬も詰めかける。張り詰める空気の中、男が賽を振ろうとした瞬間——不意に賽が手から逃げ出すように宙を舞い、カラリと床に落ちる。出た目は“外れ”。男は顔面蒼白となり、再び賽を握り直して振るも、今度はことごとく外れ目ばかり。場内はざわつき、男はまるで狐につままれたような面持ちで、敗けに敗けて金を失ってゆく。誰もが、あの“生きているような賽”の異変に戦慄を覚える。



賭場を逃げ出した男は、すがる思いであの神社へと駆け戻る。だが、あの老人の姿はどこにもなく、例の賽も跡形もない。呆然とする男の背後で、風に揺れる竹林の中から、何かが笑ったような声がする。「クックッ…」。それはまるで、狸が人を化かして笑っているかのような音であった。江戸の片隅に、また一つ“狸に化かされた話”が加わり、夜の町にじんわりと広がっていく――。


79.日本おとぎ噺 「あとかくしの雪(あとかくしのゆき)」

100えんメガネ

昔、山の噴火で畑が火山灰に覆われ、作物の実らなくなった村があった。ある寒い夕暮れ、腹をすかせた旅人が村へたどり着き、食べ物と一夜の宿を求めて家々を訪ねた。しかし、村人たちにも余裕はなく、誰も旅人を助けようとしない。庄屋は、大切な畑の大根を盗めば、火山灰に残った足跡をたどって代官所へ突き出すと言い放った。力尽きた旅人は、村外れの道端で倒れてしまった。



村外れに一人で暮らす貧しいおばあさんが、倒れていた旅人を見つけ、自分の家へ連れ帰った。囲炉裏の火で体を温め、残っていたわずかな大根雑炊を差し出すと、旅人は夢中で食べた。しかし、それだけでは空腹は収まらず、腹の音が寂しい家の中に響いた。何も持たないおばあさんは困り果てた末、「しょうがねえだ」とつぶやき、暗い夜道へ出ていった。しばらくすると、その腕には一本の大根が抱えられていた。



おばあさんは大根を煮て、旅人に腹いっぱい食べさせた。夜明け前になると、旅人を急いで起こし、何も尋ねず山を越えるよう言いつけた。外へ出た旅人は、火山灰の上に残る足跡が、おばあさんの家から庄屋の畑まで続いていることに気づく。自分を救うため、大根を盗んだのだと悟った旅人は、涙をこらえて山道を急いだ。一方、畑を見回った庄屋も足跡を見つけ、夜が明けたら役人を連れて捕らえようと待ち構えた。



やがて庄屋が役人を呼びに出ようと戸を開けると、季節にはまだ早い雪が静かに降っていた。白い雪は火山灰の道も畑も覆い、おばあさんの家へ続いていた足跡をすっかり消していた。庄屋は盗んだ者を突き止められず、ただ降り積もる雪を見つめるしかなかった。旅人を思いやったおばあさんの優しい心を、天が助けたのだろうと村人たちは語り合った。それから、この不思議な雪は「あとかくしの雪」と呼ばれるようになった。


『宮沢賢治・光と風の物語』 第十四回「なめとこ山の熊」第4話 熊たちに囲まれた最期/全4話

100えんメガネ

ある冬、小十郎は猟のため、雪深いなめとこ山へ入った。家族を養うには熊を撃つほかなかったが、熊への申し訳なさは消えない。激しい吹雪の中、小十郎は鉄砲を背負い、足跡を探して山奥へ進んだ。やがて大きな熊の姿を見つけ、静かに銃を構えた。



小十郎が狙いを定めた瞬間、足元の雪が崩れ、体勢を失った。熊は逃げず、倒れた小十郎へ向かってきた。小十郎は鉄砲を撃とうとしたが間に合わず、熊の大きな力を受けて雪の上に倒れた。長年山を歩き続けた熊撃ちの命は、ここで静かに尽きようとしていた。



吹雪がやみ、青白い月が雪山を照らした。倒れた小十郎の周囲には、いつの間にか多くの熊が集まっていた。熊たちは争うことも騒ぐこともなく、静かに輪をつくって小十郎を見つめている。それは獲物を囲む姿ではなく、山で共に生きた者の死を悼むような、不思議で厳かな光景だった。



熊たちは小十郎の亡骸を囲み、夜が明けるまで動かなかった。小十郎は熊を撃つ猟師でありながら、熊の命を敬い、その悲しみを知る人でもあった。熊たちは、その心を理解していたのかもしれない。雪山の静けさの中、小十郎の魂は熊たちに見守られ、なめとこ山の自然へ帰っていった。