『宮沢賢治・光と風の物語』 第十四回「なめとこ山の熊」第4話 熊たちに囲まれた最期/全4話
ある冬、小十郎は猟のため、雪深いなめとこ山へ入った。家族を養うには熊を撃つほかなかったが、熊への申し訳なさは消えない。激しい吹雪の中、小十郎は鉄砲を背負い、足跡を探して山奥へ進んだ。やがて大きな熊の姿を見つけ、静かに銃を構えた。

小十郎が狙いを定めた瞬間、足元の雪が崩れ、体勢を失った。熊は逃げず、倒れた小十郎へ向かってきた。小十郎は鉄砲を撃とうとしたが間に合わず、熊の大きな力を受けて雪の上に倒れた。長年山を歩き続けた熊撃ちの命は、ここで静かに尽きようとしていた。

吹雪がやみ、青白い月が雪山を照らした。倒れた小十郎の周囲には、いつの間にか多くの熊が集まっていた。熊たちは争うことも騒ぐこともなく、静かに輪をつくって小十郎を見つめている。それは獲物を囲む姿ではなく、山で共に生きた者の死を悼むような、不思議で厳かな光景だった。

熊たちは小十郎の亡骸を囲み、夜が明けるまで動かなかった。小十郎は熊を撃つ猟師でありながら、熊の命を敬い、その悲しみを知る人でもあった。熊たちは、その心を理解していたのかもしれない。雪山の静けさの中、小十郎の魂は熊たちに見守られ、なめとこ山の自然へ帰っていった。

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