語り継ぐこころ/日本おとぎ噺・江戸小咄・古典落語・笑いの匠たち

日本おとぎ噺・江戸小咄、古典落語・笑いの匠たちのダイジェスト版と挿絵です。たまに、私の与太話が入ります。 文も挿絵もChatGPTが作っています。   よかったら ★nice! をポチット押してね。

34.『古典落語』「狸賽(たぬさい)」

100えんメガネ

長屋に住む一人の博打打ちの男。つきも運も尽き果て、賽(さい)を振っては外れ目ばかり。暮らしは傾き、財布はすっからかん。ある日、神社の境内で腰を下ろしていたところ、どこからともなく現れた白髪の老人が声をかけてくる。「あんた、よほど運がないようじゃな」。そう言うや、老人は懐から不思議な賽を取り出す。それは触れると温かく、まるで生き物のような感触だった。「これで振れば、当たり目しか出ん。だが、礼は後で払ってもらうよ」と笑う。男は半信半疑ながらも、その賽を受け取る。



その夜、男は試しに賽を振ってみる。すると、出るわ出るわの“目利き”。あっという間に賭場で連戦連勝。噂は江戸中に広まり、男の周りには金と人が集まり出す。賭場では誰もが彼の振る賽に魅せられ、勝ちを重ねる様に舌を巻く。男もついに“時の人”となり、遊びも酒も贅沢三昧。だが、浮かれ騒ぐその背後で、あの老人の不気味な笑顔が、ふと脳裏をよぎることもあった。



そしてついに、大勝負の日。賭場には大金がうずたかく積まれ、野次馬も詰めかける。張り詰める空気の中、男が賽を振ろうとした瞬間——不意に賽が手から逃げ出すように宙を舞い、カラリと床に落ちる。出た目は“外れ”。男は顔面蒼白となり、再び賽を握り直して振るも、今度はことごとく外れ目ばかり。場内はざわつき、男はまるで狐につままれたような面持ちで、敗けに敗けて金を失ってゆく。誰もが、あの“生きているような賽”の異変に戦慄を覚える。



賭場を逃げ出した男は、すがる思いであの神社へと駆け戻る。だが、あの老人の姿はどこにもなく、例の賽も跡形もない。呆然とする男の背後で、風に揺れる竹林の中から、何かが笑ったような声がする。「クックッ…」。それはまるで、狸が人を化かして笑っているかのような音であった。江戸の片隅に、また一つ“狸に化かされた話”が加わり、夜の町にじんわりと広がっていく――。