ある日、浅草の縁日帰りの道すがら、町人の熊五郎と八公が、厩(うまや)の前を通りかかる。そこには、一頭の牛と、一頭の馬が並んでつながれていた。牛はおっとりとした目で黙って草をはみ、馬はそわそわと足を動かし、鼻息荒く辺りを見渡している。

熊五郎がふと、「おい八、牛と馬、どっちが賢いと思う?」と聞く。八公は少し考えて、「そりゃあ馬だろ。足は速えし、将軍様だって馬に乗るしな」と答える。すると熊五郎、にやりと笑って言う。「でもよ、牛は役人を乗せたことなんざ、一度もねぇぞ」と。

そこへ、近くのご隠居が通りがかり、「何を馬鹿なことを言っておる」と口を挟む。「そもそも、牛と馬とでは使い道が違う。馬は急ぎの用に、牛は根気の仕事に向いておる。どちらが偉いという話ではなかろう」と説教を始めた。

熊五郎、涼しい顔で答える。「へぇ、ご隠居のおっしゃる通りで。けどね、牛がえらいのは、役人に乗られねえ分、気楽ってもんですぜ」と言ったところで、隣の八公が、「それを言やぁ、俺たちゃ馬以下か!」と叫び、三人でどっと笑う。
夕暮れの道に、江戸の笑いが軽やかに響いた――。
















