63.日本おとぎ噺 「熊と狐(くまときつね)」
昔、深い山奥に熊と狐が住んでおった。熊は大きな体でどっしり構え、正直でまじめな性格。対して狐はずる賢く、いつも知恵を働かせて楽をして暮らしていた。ある日、食べ物が乏しくなり、二匹は「一緒に食べ物を探そう」と相談する。熊は力仕事を、狐は見張りや策を担当すると決めたのだった。

ある日、熊が重い岩をどかし、立派な鹿を罠にかけることに成功した。喜んだ熊は、「お前は見張りをしていてくれ。ちょっと水を汲みに行ってくる」と狐に言い残してその場を離れた。狐はその鹿を見て思う。「これを食べたら、うまいだろうなぁ……熊のやつ、鈍いんだからバレやしないさ。」

狐はこっそり鹿の肉を少しずつ食べはじめ、ついにはぺろりと全部平らげてしまった。やがて戻った熊に、「鹿は逃げたよ。仕方ないね」としれっと言い訳をする。熊は怒りはしなかったが、その夜、ひとり森にこもって考え込む。次の日、熊は罠の場所を変え、「狐には別の場所を見張ってもらおう」と提案した。

熊は新たに罠を仕掛け、そこに狐を先に送り込み、「ここで待っていてくれ」と言った。しばらくして、狐の足元が抜けて、狐は熊の仕掛けた落とし穴に落ちてしまう。罠の底で土まみれになった狐は叫ぶ。「おい熊!冗談だろう!」熊は上から静かに言った。「鹿が逃げたって? 今度はお前が逃げてみろ。」その日以来、狐はこの山を出ていったという。

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