42.『古典落語』「らくだ」
とある江戸の貧乏長屋に住む乱暴者の通称「らくだ」が、ついに酒の呑みすぎでくたばった。らくだは嫌われ者だったが、その死に顔はなぜか穏やか。そこへ現れたのが、らくだの兄貴分を名乗る札付きのごろつき「兄貴分」。香典や葬式の段取りをつけようにも、近所の者たちは誰も関わりたがらず、長屋は静まり返る。

兄貴分は、通りすがりの屑屋・久六(くろく)を呼び止め、言葉巧みに使い走りにする。最初は酒や肴の調達だったが、やがて棺桶の手配、坊主の依頼とどんどん要求がエスカレート。ついには「らくだの弔いだ。嫌がっても手伝え」と強引に命令する。恐怖に震える屑屋は、しぶしぶ言う通りにするしかない。

ところが、葬式の段になっても誰も参列せず、金も集まらない。怒った兄貴分は屑屋に命じ、近所の者たちの家を一軒一軒回らせて無理やり香典を巻き上げさせる。さらには「せめて通夜ぐらい派手にやらなきゃ死んだらくだが浮かばれねぇ」と言い出し、なんと死体を起こして酒を呑ませようとする始末。酔った兄貴分と屑屋は、ついに死人相手に三人で酒盛りを始める。

夜も更け、酔いが回ってきた兄貴分は、屑屋に「らくだの踊りを見せろ」と命じる。泣きながら踊る屑屋。そこへ通りかかった町役人が、騒ぎを聞きつけて立ち寄るが、その異様な光景に絶句。「死人を囲って呑んで踊って、何の騒ぎだ!」――こうして大騒動の末、兄貴分は連行、屑屋は釈放されたとか。
江戸の裏町で繰り広げられる、哀れで滑稽な人間模様。死んでも憎まれ、生きてても恐れられた「らくだ」が、最後に一座の主役になる、奇妙で痛快な一席である。

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