『宮沢賢治・光と風の物語』第十九回「北守将軍と三人兄弟の医者」第1話 三人兄弟の医者/6話
ラユーの都には、評判の高い三人兄弟の医者がいた。長兄リンパーは人間の病を診る医者、次兄リンプーは馬や獣を治す医者、末弟リンポーは草木や穀物をよみがえらせる医者である。人も獣も作物も、この兄弟の名を知り、都の人々はその不思議な腕前を頼みにして暮らしていた。

長兄リンパーのもとには、熱を出した者やけが人、年老いた者まで多くの患者が訪れた。次兄リンプーの家には、弱った馬や家畜を連れた人が集まり、末弟リンポーの庭には、しおれた草花や実りの悪い苗木を持つ人々が相談に来た。三人はそれぞれ違う相手を治しながら、町じゅうの命を支えていた。

三人兄弟が評判になったのは、ただ珍しいからではなかった。リンパーは脈や顔色をよく見て人を安心させ、リンプーは馬の息づかいや足取りから不調を見抜き、リンポーは葉や根の様子から土や水の具合まで考えた。相手は違っても、命を大切に思う心は同じで、その誠実さが都の人々の信頼を集めていた。

こうしてラユーの都には、人と獣と草木を守る三人兄弟の医者が静かに暮らしていた。まだこの時、彼らは、自分たちのもとへ北の大将軍が訪れ、都じゅうを驚かせる出来事が始まるとは知らない。三人の不思議な力は、やがて大きな物語の中で試されることになる。

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