98.日本おとぎ噺 「おりゅう柳(おりゅうやなぎ)」
昔、ある山あいの村に「おりゅう」という美しい娘がいました。働き者で心優しく、村の誰からも好かれていました。おりゅうには恋仲の若者・茂吉(もきち)がいましたが、村を離れて稼ぎに出ることになります。ふたりは「必ず戻る」と約束し、別れを惜しみつつも見送りました。

数年が過ぎ、茂吉はようやく村へ戻ることができました。だが、おりゅうの姿はどこにも見当たりません。村人に尋ねると、彼女は茂吉を待ち続けた末、ある晩ふっと姿を消したというのです。茂吉は悲しみに暮れ、おりゅうがよく座っていた柳の木の下に通うようになります。

ある夜のこと、柳の下でうたた寝していた茂吉の耳に、懐かしいおりゅうの声が聞こえました。目を覚ますと、柳の枝がやさしく風に揺れています。村の古老は言いました。「あの柳には魂が宿っておる。おりゅうの想いが枝に乗り、風になったのじゃろう」と。

茂吉はその後も柳のそばで暮らし、木を「おりゅう柳」と呼び、花を供え続けました。やがて村人たちも柳に手を合わせるようになり、木は「想いを守る柳」として大切にされました。おりゅうの想いは、風となって今も柳の葉を揺らしているのかもしれません。

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