95.日本おとぎ噺 「蛸八長者(たこはちちょうじゃ)」
昔、海辺の村に「蛸八(たこはち)」という、貧しいが正直者の漁師が住んでおった。毎日小舟で沖へ出ては、たこ壺で蛸(たこ)を捕って暮らしていたが、大漁の日はめったにない。それでも蛸八は愚痴ひとつ言わず、村人にも親切に接しておった。

ある日、蛸八が漁をしていると、不思議な金色の光を放つ大きな蛸がたこ壺にかかっていた。その蛸は人の言葉を話し、「助けてくれたら恩返しをする」と言うではないか。驚きながらも蛸八はその蛸を海へ帰してやった。

それからしばらくすると、村の海にたくさんの蛸が集まるようになり、蛸八のたこ壺には毎日山ほどの蛸がかかった。たちまち蛸八は大金持ちになり、村人たちからも「蛸八長者」と呼ばれるようになった。だが、蛸八は以前と変わらず、質素な暮らしを続け、村人にも財を分け与えた。

ある晩、蛸八の夢に金色の蛸が現れ、「正直者は必ず報われる。これからもその心を忘れずに」と語った。目覚めた蛸八は、浜に立ち、穏やかな海を見つめながら静かにうなずいたという。以来、その村には「誠実こそ宝」という言葉が伝えられておる。

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