5.『古典落語』「こんにゃく問答(こんにゃくもんどう)」
ある日、江戸の寺に居候している一人の若い坊主が、街道筋のこんにゃく屋に立ち寄る。商いの合間にちょいと一休みと、坊主と世間話に花が咲くうち、話題は仏教に。「仏とは何か?」とふざけて尋ねたこんにゃく屋に、坊主は気の利いた答えも出せず、赤っ恥。周囲に笑われ、「坊主のくせに問答もできねえとは」と冷やかされ、思わず「じゃあ、法問答で勝負しようじゃねえか!」と啖呵を切ってしまう。

にわかに町内の関心を集めることとなり、「坊主対こんにゃく屋の問答勝負」が日取りを決めて寺で開かれることに。だが、肝心の坊主は無学で口下手、自分が言い出した勝負とはいえ逃げ出したい気持ちでいっぱい。そこへ助け舟を出したのが、寺の和尚。「言葉ではなく、身振り手振りで問答すればよい」と、ジェスチャー問答を指南する。

いよいよ当日、町の人々が見守る中、こんにゃく屋と坊主が対峙。まず坊主が一本指を立てれば、こんにゃく屋は二本指で返し、坊主が三本指を示すと、こんにゃく屋はこぶしを作って応じ、最後は坊主が手のひらを差し出すと、こんにゃく屋も手のひらを合わせて一礼――。これを見ていた和尚は「こやつ、やるな」と唸る。
問答の後、観衆が「いったいあれは何だったのか」とざわめくと、和尚が通訳役を買って出る。「一本指は“仏は唯一”の意、二本は“仏と衆生”、三本は“三宝”、拳は“それを一つにまとめる悟り”、手のひらは“天地への祈り”――まさに立派な法問答じゃ」と感嘆。

だが一方、こんにゃく屋はこう語る。「一本指で“目玉ひとつ”ってバカにされたから、二本で“目はふたつあるぞ”と返し、三本出されたから“三文の得か?”と聞いたら、こぶしで“殴るぞ”って脅されて、慌てて平身低頭しただけさ」と。結局、互いにまるで意味の違うことを考えていたのだが、町の連中は「まあ、どっちも名答よ」と大笑い。江戸の町に笑いと機知が響き渡る、粋なオチで噺は幕を閉じる――。

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