語り継ぐこころ/日本おとぎ噺・江戸小咄・古典落語・笑いの匠たち

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『宮沢賢治・光と風の物語』第十六回「祭の晩」第1話 祭りの夜と山男との出会い/全4話

100えんメガネ

祭りの晩、亮二は胸をはずませながら、村のにぎやかな通りへ出かけた。提灯の明かりがゆれ、太鼓や笛の音が夜気に流れ、屋台には団子や飴、見世物小屋が並んでいる。子どもたちも大人たちも浮き立ち、村じゅうがいつもと違う華やぎに包まれていた。



亮二は人ごみを縫うように進みながら、店先をのぞいて祭りの景色を楽しんだ。焼き物の匂い、笑い声、遠くの囃子が重なり、夜の村はまるで別世界のようだった。そのとき、一軒の団子屋の前に人だかりができているのに気づき、何事かと足を止めた。



人だかりのまんなかには、ひどく大きな男が立っていた。髪も顔つきもどこか荒々しく、着物も普通の村人とは違って見える。その男は団子を食べたらしいが、どうも困り果てた顔で立ちすくみ、店の主人や見物人に囲まれていた。亮二は、その異様な姿に驚きながらも目を離せなかった。



ただの酔っぱらいとも旅人とも違う、その大男には、山のにおいをまとった不思議な気配があった。祭りの明るさの中に、急に山の闇がまぎれこんだようで、亮二は胸をどきどきさせた。こうして祭りの夜、亮二は後に忘れられない出来事の相手となる山男に、はじめて出会ったのである。