64.日本おとぎ噺 「田植地蔵(たうえじぞう)」
昔ある村に、貧しいながらも働き者で信心深い若者がいた。男は村はずれの古びた地蔵さまに、毎朝水を供え、米の飯をお供えして手を合わせていた。村の者は「そんなことしても腹はふくれぬぞ」と笑うが、男は「地蔵さまは見ておられる」と信じて疑わなかった。

ある年、村人たちは一斉に田植えを始めた。若者もせっせと田に入り働いていたが、途中で「今日は供え物を忘れた」と気づく。田仕事を抜けて、泥だらけのまま駆け戻り、慌てて供え物をして拝んだ後、また急いで田に戻った。だが、自分の分の田植えは、ほとんど手付かずのままだった。

疲れ果てて戻った若者が自分の田を見ると、なんとすでにきれいに田植えが終わっていた。驚く男に、近くの村人が「さっき、見慣れぬ僧姿の二人が、無言で手際よく植えて去っていった」と教える。男はすぐに地蔵のもとへ向かい、深々と手を合わせて涙を流した。

それ以来、村人たちも地蔵への信仰を見直し、毎朝水と米を供えるようになったという。若者はますます誠実に働き、豊かな年を重ねていった。地蔵は今も田のはずれに佇み、村を見守っているという。

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