『宮沢賢治・光と風の物語』第七回「狼森と笊森、盗森(おいのもりとざるもり、ぬすともり )」
昔、岩手山の噴火で生まれた四つの黒い森に囲まれた野原へ、四人の百姓と家族が移り住んできた。百姓たちは森に向かい、畑を耕し、家を建て、火をたき、木をもらってよいかと尋ねる。森は「いいぞお」「ようし」と答えた。人々は丸太小屋を建て、森に守られながら新しい暮らしを始めた。

畑が実り始めた秋、四人の子どもが姿を消した。人々が狼森へ入ると、子どもたちは九匹の狼に栗やきのこを御馳走され、桃色の火を囲んでいた。翌年には農具が消え、笊森の大きな笊の下から、農具と赤い顔の山男が見つかった。人々は怒りながらも、狼や山男に粟餅を届け、いたずらを許した。

さらに開拓が進んだ秋、納屋いっぱいの粟が一粒残らず消えた。狼森にも笊森にもなく、黒坂森は、夜明け前に大きな黒い足が北へ飛ぶのを見たと告げる。人々が盗森へ向かうと、手の長い黒い男が現れ、「証拠があるのか」と怒鳴った。森は暗く揺れ、人々は恐ろしさのあまり逃げ出しそうになった。

その時、銀の冠をかぶった岩手山が空から声を響かせ、粟を盗んだのは盗森だと裁いた。盗森は自分でも粟餅を作ってみたかったのである。家へ戻ると粟は納屋へ返されていた。人々は四つの森へ粟餅を届け、盗森には一番多く分けた。それから森と人々は友達となり、毎年、冬の初めに粟餅を分け合った。

このブログへのコメントはmuragonユーザー限定です。