語り継ぐこころ/日本おとぎ噺・江戸小咄・古典落語・笑いの匠たち

日本おとぎ噺・江戸小咄、古典落語・笑いの匠たちのダイジェスト版と挿絵です。たまに、私の与太話が入ります。 文も挿絵もChatGPTが作っています。   よかったら ★nice! をポチット押してね。

31.『古典落語』「大安売り(おおやすうり)」

100えんメガネ

浅草の商い通り、今日も人波でにぎわっておりやす。なかでもひときわ賑やかな声がするのは、新参者の荒物屋。店先には“本日限り! 大安売り!”の大きな札がひらひら。若い店主が威勢よく声を張り上げ、桶だの笊(ざる)だの、何でも五文、十文で売ると聞いて、町内の婆さま方が群がっておりやす。



さて、その値の安さたるや尋常じゃねぇ。ひとつ五十文はくだらねぇ洗面桶が、たったの七文。通りすがりのご隠居が訝(いぶか)って近づき、「なんでそんなに安いんで?」と問えば、若旦那はにこりと笑って「うちの親父の遺言でね、“儲けは度外視、客に喜ばれろ”ってんです」と、いかにも孝行息子の面持ち。なるほどと納得した町人たち、次々と品を買い込んでゆく。



しかしご隠居、どこか引っかかる。商品をよく見ると、洗面桶の底に穴が空いていたり、笊の編み目が甘くて米がこぼれる。なるほど“訳あり品”ってわけで。しかも一度売ったら返品お断り。若旦那は言い抜けの達者で、「いやいや、それも味ですよ。江戸っ子なら気にしない」と煙に巻く。買った婆さま方も、苦笑いしながら「しょうがないねぇ、安かったんだから」と引き下がる。



後日、ご隠居がもう一度その店を訪れると、なんと若旦那は別の顔で、「今日は訳なし! 正真正銘の品揃え!」と叫んでる。今度はちゃんとした商品らしく、客の評判も上々。「こちとら、最初は顔を売る“撒き餌”だったんですよ」と若旦那が笑えば、ご隠居も「こりゃ一本取られたな」と肩をすくめる。
――江戸の町じゃ、たとえ一杯食わされても、相手がうまけりゃ拍手も出やす。笑って損して、また明日も来る。それが、江戸っ子の“粋”ってもんでござんす。