73.日本おとぎ噺 「子育て幽霊(こそだてゆうれい)」
むかし、ある町の飴屋に、夜更けになると一人の女がやって来て、一文銭を出しては「飴をひとつください」と頼んだ。不思議なのは、いつも同じ着物で、顔色も青白く、生気が感じられないことだった。女は飴を受け取ると、静かに町の裏手の古寺の方へと消えていく。店の主人は気味悪く思いながらも、毎晩飴を売り続けた。

何日も続くその訪問に、不安になった飴屋の主人は、ある晩、女の後をこっそりつけてみた。女が入っていったのは、町外れの古い墓地の中の、一つの古い墓だった。驚いた主人はすぐに寺の和尚に相談し、和尚とともにその墓を掘り返してみることにした。

墓を掘り返すと、棺の中には亡くなった若い女の遺体があり、その胸元には生きて泣く赤ん坊がいた。母は死んでいたが、飴を買いに来ては子を育てていたのだと、人々は涙を流した。和尚は赤子を引き取り、寺で大切に育てることになった。

赤子は健やかに育ち、大人になってからも、「自分は母の魂に育てられたのだ」と語り継いだという。母の深い愛情は、死してなお子を守り、飴屋も町の人々もその話を大切に伝えた。――それ以来、「子育て幽霊」として語り継がれることになったのだ。

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