2. 『古典落語』「時そば(ときそば)」
ある冬の夜更け、江戸の町。男が屋台の蕎麦屋に近づき、「そば、ひとつくんな」と声をかける。寒さもあってか、屋台の湯気がありがたく感じられる。蕎麦屋は「へい、いらっしゃい」と応じ、男にそばを出す。男は器用にすすりながら、実にうまそうに食べる。周囲の人間も思わず見とれるほどの食べっぷりだ。

そばを食べ終えた男は、代金を払おうと銭を数え始める。「一文、二文……六文、七文、今何時(なんどき)だい?」「へえ、八つで」と蕎麦屋が答えると、男は「九文、十文」と言って銭を渡し、さっさと立ち去る。残された蕎麦屋は一瞬きょとんとするが、後で気づく。「あっ、あの客、今何時か聞いてる間に、数をごまかして十文のうち一文、抜かしやがった!」

その様子をこっそり見ていたもう一人の男。「これは使える手だ!」と感心し、翌晩、同じように屋台の蕎麦屋へ出向く。蕎麦を注文し、いざ代金を払う段になり、さっそくまねをして銭を数える。「一文、二文……五文、六文、今何時だい?」「へい、四つで」「……五文、六文、七文、八文、九文、十文」と払って満足気に立ち去る。

だが、そば代は十文だった。つまりまねしたつもりが、二文も余計に払ってしまったのだ。知らぬが仏のまぬけな男。その勘違いぶりが、観客の笑いを誘って噺は終わる。

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