「私の与太話」「やばい」
昔、「やばい」といえば、堅気の人が日常で使う言葉ではなかった。「まずい」「危ない」「捕まるぞ」といった、どこか物騒な響きのある言葉だった。私などは「やばい」と聞けば、今でも警察から逃げる人の顔が先に浮かぶ。

ところが今では、若い人が料理を一口食べて「これ、やばい!」。きれいな景色を見ても「やばい!」。服を見ても、歌を聞いても「やばい!」。昔の意味なら、料理も景色も服も、全部「危険物」ということになってしまう。

先日もテレビで若者が「このケーキ、やばい」と大喜びしていた。私は思わず「腹でも壊すのか」と心配したが、どうやら「ものすごくおいしい」という意味らしい。良いのか悪いのかは、顔色を見なければ分からない。言葉だけでは判断できない時代になった。

私は今でも「やばい」は好きになれない。「素敵」「うまい」「すごい」と言えば済むではないか。それでも世の中は変わる。いつか私まで「今日の血圧、やばい」と言う日が来るかもしれない。もっとも、その場合だけは――昔の意味でも今の意味でも、本当にやばい。

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