『宮沢賢治・光と風の物語』 第十四回「なめとこ山の熊」第3話 町の商人と小十郎の苦しみ/全4話
小十郎は仕留めた熊の皮と熊の胆を背負い、雪深い山を下って町へ向かった。家には食べ物を待つ家族がいる。熊を撃つことに胸の痛みを感じながらも、それ以外に暮らしを支える仕事はなかった。重い荷物を担ぎ、小十郎は黙って商人の店を目指した。

町の商人は熊の皮を広げ、傷がある、毛並みが悪いなどと言って安い値をつけた。熊の胆にも難癖をつけ、小十郎が苦労して山から運んだ品を、わずかな金で買いたたこうとする。小十郎は不満を感じたが、ほかに買い手もなく、家族のために黙って耐えた。

小十郎は、熊が命を失った代わりに得られる金が、あまりにも少ないことに苦しんだ。山では熊も子を守り、懸命に生きている。その命を奪った自分にも重い悲しみが残る。しかし町では、熊の命も小十郎の苦労も、商人のそろばん一つで安く決められてしまうのだった。

わずかな金で食料を買った小十郎は、重い心を抱えて町を後にした。熊を撃ちたくないと思っても、家族を飢えさせることはできない。商人に頭を下げ、熊には心の中で詫びながら、再び山へ入るしかなかった。小十郎の苦しみは、雪深いなめとこ山の静けさの中へ消えていった。

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