語り継ぐこころ/日本おとぎ噺・江戸小咄・古典落語・笑いの匠たち

日本おとぎ噺・江戸小咄、古典落語・笑いの匠たちのダイジェスト版と挿絵です。たまに、私の与太話が入ります。 文も挿絵もChatGPTが作っています。   よかったら ★nice! をポチット押してね。

「私の与太話」「施設での話・嫁さんの仕返し」

100えんメガネ

施設の送迎で、ご利用者さんを迎えに行った時のことである。玄関先に出てきた姿を見て、何となく様子がおかしい。顔色ではない。歩き方でもない。どこか空気が湿っている。そこで一緒に行った女性介護士に、そっと腰のあたりを見てもらった。すると案の定、衣服はびっしょり濡れていた。



このまま車に乗せるわけにはいかない。ほかの利用者さんも同乗しているし、本人にも気の毒である。そこで家族の方に、「着替えをお願いできますか」と頼んだ。すると返ってきた答えは、「施設で着替えさせてください」。こちらは仕事とはいえ、送迎車は脱衣所ではない。しかも、まだ迎えに回る家が残っている。



結局、女性介護士が家の中で手早く着替えを済ませ、何事もなかったように車へ乗せた。ご本人は黙っていたが、どこか申し訳なさそうな顔をしていた。あとから聞けば、その方は若いころ、嫁さんに相当きつい姑さんだったらしい。言葉も態度も強く、家の中では長いこと女将さんだったという。



そう聞いて、少しだけ事情が見えた気がした。嫁さんは何も怒鳴らない。責めもしない。ただ、「施設でお願いします」と静かに言っただけである。介護の現場では、昔の人間関係まで車に乗ってくる。人生の仕返しとは、包丁や金槌で来るとは限らない。時には、濡れた腰巻き一枚で帰ってくるのである。