81.日本おとぎ噺 「河童のくれた妙薬(かっぱのくれたみょうやく)」
むかし、ある村の近くに川があり、川辺には河童(かっぱ)が住んでいると噂されていた。村人たちは川を恐れ、近づこうとしなかったが、ある年の夏、貧しい百姓の男が魚を獲りに川に入ったところ、足を滑らせて深みにはまり、もがいているうちに何かに足を引っぱられた。気づくと、背後には本当に河童が現れていた。

男は驚いたが、河童の目はどこか人なつこく、男に「いたずらして悪かった。命を助けてもらった礼に、これをやる」と、小瓶に入った水薬を差し出した。河童は「この薬を傷口に塗れば、どんな傷もすぐ治る」と言い残し、川へ戻っていった。男は半信半疑ながらも、家で家畜のけがに薬を塗ってみると、本当にたちどころに治った。

男はこの妙薬の力を知ると、村人のけが人を次々と治し、評判を呼んだ。やがて町からも患者が訪れ、男は金持ちになっていった。しかし、欲が出た男は「もっと薬をくれ」と河童を呼び出し、しつこく迫る。困った河童は「これきりにしてくれ」と懇願したが、男は無理に捕まえようとした。すると、薬瓶が地面に落ちて割れ、中身がすべて消えてしまった。

それ以降、薬は二度と手に入らなかった。男は再び貧しくなり、村人たちにも見放されてしまう。男はぽつりと「河童の好意を大事にすべきだった」とつぶやき、川辺でひとりたたずんでいた。今もその川では、ときおり妙薬の香りが風に乗ってただようという──。

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