82.日本おとぎ噺 「赤神と黒神(あかがみとくろがみ)」
昔むかし、ある国に、**赤神(あかがみ)と黒神(くろがみ)**という二人の神さまが住んでいた。赤神は情に厚く、心優しい神で、黒神は厳格で、善悪に厳しい神だった。二神は山の中で人々を見守っていたが、あるとき「どちらの教えが人を幸せに導くのか」で争うようになった。そこで、二人はある村に試練を与えて、それぞれの力を試すことにした。

赤神は、村に春の雨をもたらし、作物がよく育つようにした。また、病人には癒やしの夢を送り、心を温かくした。村人たちは笑顔にあふれ、互いに助け合って暮らすようになった。一方、黒神は厳しい冬の風を吹かせ、畑を枯らした。嘘をついた者や怠けた者には罰を与え、村に恐れと緊張が走った。村人たちは身を引き締めたが、心は疲れていった。

季節が巡るうち、村人たちはふと気づいた。「赤神のおかげで幸せだが、怠けてばかりではいけない」「黒神のおかげで学んだことも多い」と。ある日、村人たちは山に登り、赤神と黒神に祈った。「どうか二神そろって、私たちを導いてください」と。その声は空に届き、雷鳴とともに雲が割れた。

赤神と黒神は互いに顔を見合わせ、静かにうなずいた。そして、「慈しみと厳しさ、どちらもあってこそ人は成長する」と悟り、村の守護神としてともに祀られるようになった。それから村は、喜びと節度をもって栄えたという。赤と黒、ふたつの神の像は今も並んで立ち、村人たちは感謝を捧げ続けている。

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