「私の与太話」「糖尿病」
以前、糖尿病と診断されました。医者からは「原因の一つは酒です。やめなさい」と真顔で言われ、断酒会のある専門病院を紹介されたのです。私は観念して通院しましたが、待合室では年配の方々が「昨日も飲んじまった」「焼酎が忘れられん」と、実に楽しそうに酒の話をしておりました。私は椅子に座りながら、「これは治療というより酒談義ではないか」と不安になったのでございます。

さらに耳を澄ますと、「肴は何が良い」「昔の一升瓶は旨かった」など、話題はますます盛り上がります。まるで居酒屋の昼席です。私は「ここへ通ったら、酒をやめるどころか飲みたくなる」と思い始めました。結局、その病院へ通うのはやめ、自分で断酒することに決めたのです。すると不思議なもので、誰にも酒の話を聞かされぬせいか、八年も断酒が続きました。

その間、インシュリンを使いながら真面目に治療を続けました。検査の日は毎回どきどきでしたが、数値は少しずつ改善し、ついに先生から「境界線を下回りました」と言われたのです。私は恐る恐る、「先生……酒は少しくらいなら」と尋ねました。先生はカルテを見ながら、「飲みすぎなければ結構ですよ」と、ありがたいお言葉をくださったのでございます。

私は嬉しくなり、その夜は久しぶりに晩酌をしました。ところが一杯飲んだだけで顔が真っ赤になり、すぐ眠くなってしまったのです。家内は呆れ顔で、「八年もやめてたんだから弱くなるわよ」と笑いました。私は湯呑みを眺めながら、しみじみ申しました。
「なるほど……酒をやめたおかげで、今では酒に勝てなくなりました。」

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