『宮沢賢治・光と風の物語』第三回「注文の多い料理店」
二人の若い紳士は、狩猟のため案内人と猟犬を連れ、深い山へ入った。しかし獲物は見つからず、猟犬も倒れ、案内人ともはぐれてしまう。冷たい風が吹く森をさまよううち、二人は「西洋料理店 山猫軒」と書かれた立派な建物を発見した。腹をすかせた二人は大喜びし、無料で食事ができる店だと思って、重い扉を開けた。

店内には客も給仕もおらず、扉を進むたびに新しい注意書きが掲げられていた。「髪を整えてください」「靴の泥を落としてください」「金属類を外してください」と、奇妙な注文が続く。二人は高級店の作法だと都合よく考え、帽子や上着、銃まで外した。さらに顔や手足へクリームを塗り、香水のような酢まで体へ振りかけた。

最後の扉には、「体へ塩をよくもみ込んでください」と書かれていた。そこで二人は、ようやく自分たちが料理を食べる客ではなく、山猫たちに食べられる料理なのだと気づいた。扉の向こうからは、舌なめずりをする声や、早く入れと急かす声が聞こえる。逃げ道はなく、二人は恐ろしさに震え、顔をくしゃくしゃにして泣き出した。

その時、死んだと思っていた二匹の猟犬が勢いよく飛び込み、奥の扉へ向かって激しく吠えた。山猫たちは逃げ去り、料理店も霧の中へ消えてしまう。二人は案内人に助けられ、無事に町へ帰った。しかし恐怖でしわくちゃになった二人の顔は、どれほど湯に入り、薬をつけても、二度と元には戻らなかった。

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