157.日本おとぎ噺 「山んばの嫁さん(やまんばのよめさん)」
ある村に若者が暮らしていた。ある日、山奥で美しい娘に出会い、互いに惹かれて夫婦となる。娘は器量よしで家事もよくこなし、村人からもうらやましがられるほど幸せな日々を送った。しかし村人の中には「どうもあの嫁は山んばに似ている」と囁く者もあり、不安が少しずつ広がっていった。

ある晩、若者は村人に誘われ、嫁の素性を確かめようと決意する。言い伝えでは「山んばは夜中に正体を現す」とあった。若者は寝たふりをし、深夜にそっと目を開けた。すると、美しいはずの嫁が恐ろしい鬼女の姿となり、鋭い爪で何かをむさぼる光景が目に映った。若者は震えながら息を殺し、夜明けを待つしかなかった。

翌朝、若者は命からがら山へ逃げ出した。怒り狂った山んばは嫁の姿に戻って追いかける。山道を駆け下りる若者の背後には鬼女の影が迫り、風が唸り木々がざわめく。若者は村の社の前に辿り着き、必死に神仏へ救いを祈った。すると社の灯明が明るく輝き、山んばは眩しさに怯えて姿を消した。

こうして若者は難を逃れたが、嫁が山んばであったことは村中に広まり、恐怖と教訓として語り継がれた。「どんなに美しい姿をしていても、その正体を見極めねばならぬ」と。若者は以後慎ましく暮らし、社には山んば除けの祈りが絶えなかったという。
